このおそ松さん公式がえぐい六つ子の誕生日直前スペシャル

一回書いた記事が飛びましたのでローテンションに行きます。わたしはいま絶好調に死にたいです。

 

まずこれを見てほしいんだ。

【グッズ-ストラップ】トイズワークスコレクション にいてんごむっ! おそ松さん そのに | アニメイトオンラインショップ

二次創作見ない方は「あたらしいグッズ出るんだね」とお思いでしょう。

これはpixivで「宗教松」というタグで投稿されている二次創作設定のパラレルのモチーフの公式採用です。

 

三行でまとめますが、

  • 原作準拠とパラレルのごった煮のパラレル設定があって人気がある
  • その設定準拠の公式グッズが出る
  • ネタの料理が二次創作よりよほどうまい

 

元気がないって言ったろさくさくいくぞ。

宗教松というタグは

  • 女神チョロ松―2話準拠、デリバリーコント本当は怖いイソップ童話における「泉の女神」のコスプレ
  • 悪魔おそ松―12話準拠、トト子ちゃんとふたりで悪だくみをしているいわば「イメージ映像」

以上二点を起点としておそらく今年の1月ごろ発生し(記憶で喋っています、pixivのアーカイブは初投稿の人消えてるかもしれないしさらしあげみたいになるのもなんだし)

  • ゾンビトド松―ゾンビ以外のこともあるんですが公式採用がこれなので。なお公式採用の聖歌隊トド松はモチーフがゾンビトド松と被っているので要するにクリスマスキャロルの聖歌隊でありゾントドを限りなくマイルドにしたものと思われます。これは11話準拠。なおゾンビ化は全員してるんですトド松だけ絶大な人気があります。体が半分にちぎれててかわいいからじゃないですかね(雑な見解)。

原作準拠はここまで

  • 神父カラ松―二次創作設定。5話がキリストの受難を連想させる説が一定量の層を持っていたのが発祥かと思ってましたが2話3話からカラ松まじ聖母勢が一定量いるので5話より古いのではないかという指摘を頂きましてまあそんな感じです。
  • 十四松マジ天使―十四松の人外性をポジティブに捉えたインターネットミームです。

一応根拠があると言えなくもないというかまあ言いたいことはわかる二次創作設定がここまで

という設定が各クラスタにばらばらばらっとあってそれぞれ楽しんでいたところ、デビめが(カップリング名称)を起点としてすごい勢いで習合し、ひとつの共通世界観ということになって「宗教松」というタグが付きました。そのタグでいいのかよという話(ゾンビ……)(天使を宗教と呼ぶとそれはちょっと意味が変わってこないか……)(悪魔と女神はどちらもある種の土着信仰では……)(唐突にいるキリスト教徒……)はまあいいです。わたしは趣味が二次創作のテクスト形成を追うことで、おもしろいことやってるなーと思いながら眺めてたんですが、ポイントは人間がカラ松しかいないことじゃないかと。カラ松って16話からフツーにしゃべるようになるまでおもしろポエム吐きクリーチャーみたいな雰囲気で処理されることが多かったと思うんですが(幼女か聖母かおもしろクリーチャーって感じ)、この設定は逆にカラ松だけが人間で、つまり「カラ松から見たおそ松さん」みたいになっているなあと思いながら楽しく拝見しておりました。「宗教とは……」とは言ってたけど。

 

お気づきでしょうか。

一松くんがいません。

一松くんは宗教松において固定の役が振られておらず(猫又か童貞ゴッドじゃだめなのかよって思うんですけども)、書き手の解釈によって変化します。シスターイッチはたしかに人気がありますが別にそれ固定ではありません。

 

公式の採用が来た……。

シスターイッチ、なんの脈絡もないのに……。

シスターの格好させたいのはすげえわかるけど、脈絡がないという意味では本当に脈絡がないのに……。

 

まあこれ、「これが以降公式設定」ってガチガチになる必要ないと思うんですけど(二次創作見てる人にしか通じない話だけどそもそも保険医は聴診器使わないし)、要するに海賊版グッズ対策のハイスペック釘刺しっていうか、普通公式というものは海賊版対策に「作るなよ、怒るよ」って言うわけですが、おそ松さん公式は「うちはもっといいのを出しますからうちから買いなよ」をブッこんできているのではないかと思います。つ、つよーい! まねできない~!

あとまあ二次創作設定を公式が、言ってみりゃアイデアの剽窃じゃねという側面も、今回は誰が言い出しっぺとも言いづらい、自然形成されたみたいな話なので、どうとも言いづらくて、う、うまい……。

 

で、その上で、「宗教 is 何」みたいなところの処理がめちゃくちゃきちんとしています。そもそもが寄せ集めの宗教松をこんな辻褄のあった話にできたのかよ! って感じです。

 

  • まず「神父」「シスター」「聖歌隊員」の後ろにあるステンドグラスが「松」なので、このグッズで「人間」の役が振られている彼らが信仰しているのは「松」
  • その上でチョロ松が「梨」と「林檎」を手にしており、梨は5話準拠で家族愛の象徴(文脈的に家庭の安寧を選んでノイズを切った話で出てきたモチーフで、梨の花言葉は愛情)、林檎はおそ松(参考1公式Twitter、参考2藤田監督Twitter)。そして彼女(彼女です)は泉の女神なので、「梨も林檎も選ばないのが正解」。
  • おそ松は「振り返っている」。
  • 十四松は大天使ミカエル(たぶん)(ちがったらごめん)、松という宗教に属していない。

チョロ松にとっておそ松がどういう存在かはいちいち言うと長くなるので割愛しますが、13話で喧嘩中にもかかわらずおそ松をセンターに据えている点だけ挙げても十分ではないかと思います。「おそ松さん」というアニメの「主人公」であり、「林檎を取る」は「おそ松の弟であること、ギャグアニメのキャラクターであることを取る」も「松野家の一員であることを取る」もしなかった、つまりこのチョロ松は24話「手紙」における自立。

それに対応して、「振り返るおそ松」は24話手紙ラストのおそ松、「弟たちと向き合うきっかけを得て振り返った」おそ松。

「シスター」一松は首を垂れてひれ伏し(まあいわば)頭上に松を戴き、「おそ松の神格を担保するための女神」であったチョロ松(参考:この世界では女は女神の姿をしている)の位置を担う形でおそ松に寄り添い、おそ松の口癖であった赤塚史上最も有名な台詞「これでいいのだ」を言って去っていった24話の一松の静かで無力な献身と対応しています。

対して神父カラ松は松を背に立ち、鏡のなかの自分を見つめています。鏡および彼の顔プリントグッズは彼のほぼ唯一にして絶対の武装であり、その上で彼が見ているのは「何か」ではなく明確に「鏡の中の自分」であり、松を戴く神はおそ松ではなく自分でありカラ松は自分自身のための宗教のなかにいるとしていると取れる。カラ松はおそ松の支配を必要とせず気を使わず、必要とあれば仲裁として武力行使に出た24話と対応しています。

トド松も立っていますが見上げて歌っているのでおそ松を見ているのかもしれません。が、彼はおそらくゾンビ、死体です。「もうここに生きて存在してはいないが、歌うことだけはできる」死体です。外の世界に実質的に出て行っているが、兄弟の未来を思って涙ながらに歌っている22話「希望の星トド松」と対応しています。

そして十四松はひとりだけこの「松」という宗教とは全く関係なく武器のようなものと玉のようなものを手にしています。大天使ミカエルだとしたらその名の意味は「神に似たるものは何か」。「十四松が誰にもわからない」「おそ松爆発のトリガーを引いたのは十四松」

 

つまりこれは24話-25話における、おそ松が松の名のもとに赤塚先生の赤を戴く神の子であることから失脚し「悪魔」となり、チョロ松が全てを捨てて自立した24話の宗教画である。

ようやるわ!

 

で、「悪魔」が「神父」を支配しようとし、それを背後に座って見ているだけの「女神」、そして「シスター」を背に載せ「聖歌隊員」をさらってどこかへ行こうとしている「大天使」。

ボックス購入特典(各店舗別)はオープニング由来の「極寒の地から火(=文明)を得た人類」、これは直球で原作準拠の神話。

ここんとこずっとおそ松さん二期やってんだよ! って喚いてるんですが、つまりそういう話なんじゃないの、次は……おそ松さん二期やってんじゃないのみたいな話をするマガジンをnoteで売ってるから気が向いたら買ってね(有料にしてるのは信者乙って言われるの飽きたからです)。

 

 

おそ松さんすげえなあ……。

なにがすげえなあって、このグッズ作るのにどれくらいの人員と企画会議が割かれたのかなあ……。

すげえなあ……。

以上です。消えたエントリを取り戻す作業はとてもつらい。ご清聴ありがとうございました。