インターネットフォークロア「荒らしとわたし」

2014年初頭にはじめたask.fmの利用をやめることにしました。現在3500答、未回答のものと消して整理したものを加えると4000答を超えると思います。その半数以上が長文回答。一年でおよそ2000といえばわたしがあそこにどれほどの熱意を費やしてきたかお分かりいただけると思います。

理由はふたつ。

あまりにも荒らしが増えたことと、askのUI改変があまりにも酷いからです。

 

後者に関しては今更述べません。さすがにいいかげん、というだけでもともとろくなUIではなかったので。それでも便利な部分があったので使っていたのですが2年使い倒してすっかり使い慣れたところでUI改悪、もともとUIがひどすぎてユーザーがどんどん逃げていたというのに何を考えているのかとしか言いようがない。そこはもういいです。さようなら。

 

おそ松さんの感想を書き始めてから加速度的に増えていますが、わたしはaskを通じて少なく見積もっても200件を優に超える、いわゆる荒らしコメントをあそこで受け取っています。ご存知の方も多いかとは思いますがaskは完全に匿名で質問を送ることができ(今はログインしないと送れなかったんだったかもしれない、でもどっちにしろ捨て垢を取るのなんて簡単で、回答側には一切質問者の情報は洩れません)、つまり悪意をインスタントにぶつけるプラットフォームとしては最適です。

そこについては割り切ってきたつもりでした。2年。4000答。おそ松さんの感想を書き始める以前の1年半ほどの間にも少なくとも100件は貰っています。遠い目をして消すか、一見荒らしではないふりを装っている相手にどれだけ突っ込んだレスを返すかということを頬杖をついて考えるだけです。

しかしここ数か月多すぎます。あまりにも多いのでいったん匿名質問を切りました(そういう機能があります)。元気よく記名で送ってくる人がいました。もうどうでもよくなりました。どうせ来るんだからもうどうでもいいと思って匿名質問を戻しました、なにしろask.fmの真骨頂はよくわからない人から送られてくるどうでもいい質問であり、匿名の方がうんと楽しい。

匿名にしたまま1週間くらい放置していたら30件くらい荒らしが溜まっていました。

何かのスイッチが入り、わたしは荒らしの中からぎりぎり文面がきれい(内容がどうとかではなく、Twitter連携でTLに流してもさほどフォロワーさんがショックを受けなさそうなという意味で、文面がきれい)なものを選んでレスを書き、次から次に送られてくるそれを選別してはレスを書きました。選別したとはいえ文章が醜いのでここにはあえて貼りません。いちいち読み返したくないから。

 

荒らしにマジレスしたのはインターネットをはじめて15年、はじめてのことです。

 

わたしはインターネットを始めた十代のうちから読者さんに恵まれた幸福なインターネットライフを送りました。結果、掲示板全盛期からweb拍手、メールでのやりとり、ブログのコメント欄、そしてSNSに移行、pixivでのメッセージおよびいわゆる「一点爆撃」、見に行く趣味はないので詳細はよく知りませんがネットウォッチ匿名掲示板で話題にしていただいたことは過去少なくとも3回(そして現在進行形で時の人になっていると数人から教えていただきましたが教えてくださらなくて結構です)、そしてわたし自身が受けたわけではないあらゆるインターネットの嫌がらせの手段を見たくなくても見える。

つまりインターネットの悪意とは15年間それなりに付き合ってきました。荒らしにここまできっちりマジレスをしたのははじめてです。おそらく二度とやらないと思います。

 

このような暴力的言辞と悪趣味な煽りによって彼らが何をしようとしているかという点について語る気はありませんし必要も感じません。ソフィスケートされた言い方に収めるなら「死ね」しか言うことはありません。

 

このような悪意に晒された時にどのような反応をするのが、自分を守る方法として適切か、という話をしようとしています。「最初に言っておくが君らには話しかけてない。死ね」

 

まず「荒らし」とは何か、ということですが、これをわたしは「明確に悪意を持った言説を絶対に目につく方法で投げつけてくること」として定義しており、匿名掲示板の中で完結しているもの、およびエゴサ―チ(本来的な意味でのPNやHNやサークル名やブログタイトルでのエゴサ―チ)で引っかかる範囲のものに関してはカウントしていません(それはそうとエゴサで引っかかる範囲で発言するあらゆるリスクに関しては自覚してください)。でも匿名掲示板で話題になると《とてもテキストにすることがはばかられるような罵倒語》がだらだら流入して地味に鬱陶しいのはたしか。

なお「悪意」ですが、「明確にこれは悪口である」とカテゴライズできる文面以外に、「質問なんですが、○○とはどういう意味でしょうか」というタイプのものもわたしは悪意としてカテゴライズしています。これはもう完全に「質問の仕方による」ので聞き方が真っ当であると判断できた場合返事をしますが、経験的に「○○ってどういう意味ですか?」という質問が「わたしに意味がわかるように話していないおまえが悪い。時間を割いてこっちに向き合え」という意味であり、目的は(自覚的であるかないかはともかくとして)相手の時間を消耗させることであるという認識があります。

あともう一種類。「あなたは○○と言っていますが、わたしは△△だと思います」。ここに「○○の人は(任意の悪口)」がたいてい末尾につくんですが、これに関しては「はあそうですか」。

こんなところだろうか。pixiv一点爆撃という趣深い荒らしの一種に関してはちょっと置いておきます(個人的にはあれはわりと好きです)。

 

そしてあらゆる悪意に対する対処法ですが、「スルーしろ」これが古来からのインターネットしぐさとして語り伝えられてきました。

結論から言いますが基本的にはこれは正解です。基本的には。

 

しかし、「スルーしろ」の理由が「荒らしに反応するのも荒らし」とか(これはたぶん匿名掲示板文脈だと思います、最近見てないけど……最後に見てたのはたぶん万年筆スレ……ウォーターマンスレだと思う……匿名掲示板では荒らしに反応すると無駄な話題で流れてしまうからだと思う)、「荒らしに反応すると調子に乗ってどんどん言ってくるから」とか、「悪口には言い返さないでいれば悪口は言った本人に返るものだ」とかであるというのは違う。全然違う。

何故なら

  • 悪口を言う人間は下手したら自分が悪口を言ったということすら気づいてない
  • 相手が傷つくかどうかすらどうでもいいこともある
  • 気軽に言って言い捨てて言ったことなど忘れている
  • 時には向こうにとっては単なるカジュアルなゲームであってそれは相手の反応を引き出すことが目的ですらないこともある

かつて黒子のバスケという作品が延々と脅迫被害に合っていた時期がありました。あれを全部なんとなくスルーしていたら、反応しなかったら、脅迫は止まったでしょうか。そんなわけがない。いじめやパワハラを苦に自殺する人は子供も大人もたくさんいます。スルーしてたらやめてもらえたでしょうか。そんなわけがない。

荒らしも同じです。スルーしたらやめてもらえるか? そういうこともなくはないですが絶対にやめてもらえるかというとそんなことはなく来るときは延々と来ます。本当に延々と来ます。そしてひとりでそれを受け止めて一個一個消していく(あるいは好意的なコメントすら諦めてリアクションを受け取る手段をシャットアウトする)以外に手段はありません。

それでも「スルーする」あるいは「内心の憤りを押し隠し、スルーしているということにしておく」はひとつの意味で正解です。

なぜならそれに反応をしようとした結果「そこに書かれた悪意を読んで」しまう方がダメージが大きい危険性があるからです。

 

もちろん世の中にはいろんな人がいて、他人の悪意と向き合うのは楽しいという人も、なんならそれで常にバトルを繰り広げるのが楽しい人もたくさんいます。でも「荒らしが来る、つらいなあ、嫌わられたくなんてない」と思っているときにその言葉にひとつひとつ向き合ってしまうのはかなり削られます。せめて「見えない」「聞こえない」と思っているほうがずっとまし、そういう意味で「スルーするのは正解です」とわたしは言います。

でもひとりで他人の悪意と向き合っていくのはつらいものです。信頼できる友人がいるならどんどん共有して一緒に憤ってもらえると良いと思う。いないときはどうしたらいいんだろう? Twitterで別垢を取って愚痴るくらいが関の山だろうか? とにかく「ひとりで抱え込まないで済めばそれにこしたことはない」と、思います。

 

と、同時に、「スルーするのは正解」だけど「最適解ではない」のは、悪口を言い捨てられるだけならまだしも、法的に有効な脅迫事件に発展する可能性、あるいはほかの犯罪に発展する可能性もありますので、度を越えていると思ったら記録を残しておいてしかるべき機関に提出した方がよいこともあります。

 

最後にちょっといい話。

pixivでは評価点一点を入れることでマイナスの感情を伝えるというしぐさがあるんですが、かつてわたしがとあるジャンルでpixivに投稿していたころ、わたしはABとBA両方pixivに投稿していたんですが、BAの、Aが女性キャラと絡む話を上げた時だけ、即日一点を入れて、それをおよそ四日程度続ける、という方がいらっしゃいました。評価点は誰が入れたかわからないので単独犯かどうかはわかりませんが何度か繰り返されていたのでおそらく同じ人ではないかなと思っています。

上げたとたんに読んでくれて内容を確認してくれてリアクションをくれてありがとう。あなたがわたしにその形で伝えようとした何かに関しては、わたしは今でも「インターネットの幸福な側面」だと思っています。あなたにとってそれが本意かどうかはわからないけど。

それはそれとして、一点爆撃とか関係なく、pixivの評価点の末尾がゼロじゃないとスッキリしなくてなんとなくイラッとする。