万年筆オタクはたくさん万年筆と万年筆インクを持っています。
さて、おそ松さんというアニメには六つ子が出てきて、それぞれテーマカラーが決まっています。アイドルグループあるいは戦隊ヒーローみたいですね。
怒涛のようにアニメを観終わって、アニメ見てる最中万年筆どころではなかった(興奮して振り回してぶつけてニブ曲げそうだった)(実際やったことある)のでしみじみと久々に大量洗浄していて、ふと気づくと
「おそ松……カラ松……カラ松……カラ松……十四松……チョロ松……待ってあと二人もいるはず」
そう。
手持ちの万年筆とインクを六つ子に仕分けてしまったのだ!!!!!!
オタク趣味とオタク趣味のコンボが決まってとてもつらい顔をしています。哉村哉子です。せっかく仕分けたので手持ち万年筆とインクを誰に振ったかという話をしようと思います。
第一回は一松くんです。
なぜ第一回が一松くんかというと、中途半端な色のインクが超似合うからです。むしろ中途半端な色が似合う子は六つ子のなかに一松くんくらいしかいないと言ってもよい。そして一松くんに似合う色をほかの子に持って行ってもなんとなくしっくりこない。ムーンシャドウはもちろん一松くん、ラマンももちろん一松くん、紫式部もやはり一松くんということにせざるを得ない。そう、他の六つ子は紫が似合わないのです! びっくりするほど! いや、服で似合うかどうかとかじゃなくて!
一松くんの魂は紫色をしており、一松くん以外の五人の魂は紫色をしていない!
ほんともうこれ一松くんですよね。むしろこのインクの名前が松野一松でいいよね。「月の塵」を「ムーンシャドウ」と訳すセンスからしてもう照れ屋の一松くんっぽいし、その上で「月の塵」彼持ってそうじゃないですか、子供の頃に行った夜店とか、古道具屋の片隅に転がってたとか、なんかそういう理由で「月の塵」という名前の石かなにかを持っている一松くん、めちゃくちゃありそう。
ざらっとした質感のある紫で、派手さも暗さも感じさせない、寄り添う影のようなインクです。フローが渋いのも無口な感じで一松くんっぽい。一松くんのロマンティックさとペシミスティックなところとペーソスと甘えを全部くるんで静かに兄弟の一番後ろで微笑ませたらこういう色っていう色です。松野一松~! 一松くんの香水ムーンシャドウみたいな匂いなんでしょ!? 嗅いだことないけど知ってる~!
外面はきれいで品がいいけど一筋縄ではいかないところのある女性、というのが紫式部(本人)のイメージなんですが、それにもうすこしパイロット的なぱあっとした明るさを加えた上で、パイロットインクなので水であり、青寄りの紫であるところも含めて本心では結構カラ松にあこがれているし脳内はやかましいし、そして脳内がやかましいわりにうじうじはしていてもゲスいところはないこどもじみた潔癖さと潔癖さに見合うこともできない自分に対するジレンマみたいなところを含めてダッバア……って流れ出るインク……って感じです。紫式部(インク)みたいになれたら友達だってできてるのにねー!
ラマン、愛人、という名前のインクで、一松くんこの言葉ちょうーーーーーーーにあうよねえーーーーーーー……ラマンていうとわたしはマルグリット・デュラスでデュラス超好きなんですけど一松くんのそれはデュラスのそれみたいな奔放な愛じゃなくてもうちょっと日本っぽい湿り気のある愛で、いやセックスの話じゃなくて(セックスの話でもいいけど)、家族に寄せる、じめっとした、しかし束縛的ではないある種のピーカンの突き抜けたあかるさすら含む、雨に濡れた苔がつやつやしているような愛……。一松くんの愛……。暗幕の底から光が湧き上がってくるようなふしぎな輝きのあるインクです。次いつ買えるだろうね……。
紫以外だと、
まず名前がひどいんだけど、そして渚ミュージアムという言葉に関係がありそうなのは次男なんですけど、でもこれ次男の色じゃないよね……。どこかに緑色の気配のある、暗めのグレーで、グレーには空のグレーと土のグレーと湿気のグレーがあると思うんだけどこれは確実に湿気の色、夜霧のなか何かを見つめようとする色。一松くんが芸術に行きたいという設定はぼかされたままでしたけどなんとなくちらほらあったと思ったんですが、兄弟とか好きなものとかを見ている一松くんの世界ってこんな感じかなーと思いました。
一松くんの魂の色は紫なんだけど、一松くんの視界の色は緑(松色)がかったグレーなんじゃないかな……。
きりがないやめよう。
万年筆は、紫軸は持ってないので、コンセプト重視で選びました。
つるんと丸まったかたちが一松くんぽい。つるん、ころん、としていてかわいいし、意外と重いところもそれっぽい。するする書きやすい優等生でわたしこのニブが世界一いいニブじゃないかとすら思います不良個体がないという意味で。一松くんってそういう、優等生の鏡みたいなところあるよね……そして優等生の鑑なのにこれじゃっかんダサいし価格設定も微妙でそんなみんな買わないんだよね……。でもコクーンという名前がまずすごくいいと思うんですよ……超一松くん……。
というかこれ一松くんにあげたい。名入れもしてあげるね。
一松くんってわたしのなかでやっぱりこういう、優等生的で、さっぱりしていて、無駄な機能がなくて、そして万年筆っぽくない、っていうイメージで、余計なところにはみ出さないけどああ万年筆だねという評価もされないっていうか、そういう位置づけの万年筆です。派手な万年筆って派手だからってだけの理由で買うじゃん、ダサい万年筆は同時に安い万年筆だからみんなに使ってもらえるじゃん、一松くんは一見とっつきにくそうに見えてじつは単なる優等生だし、照れ屋だから俺万年筆ですよって言えないし、目立たない方がいいと思ってるし、でも可能な限り自分のできる範囲でかっこよくありたいみたいなそういう……。
一松くん……。
ラミーなんだよね……ラミーなんだよ……ラミーのゴツくないほうのプロダクトだし2000もたぶん超絶一松くんっぽい子なんだろうなと思います。ほしいー。
きりがないなこの話。あとペンケースの一松くんのところにはハイエースネオも差してあります。言いたいことはもうわかるだろ!?
というわけであと五回やります! 六つ子への愛と万年筆とインクへの愛が惜しみなくかけ流し温泉!