松野カラ松くんのことを何か書こうと思ったんだけど何言ったらいいのかわかんないんだわ

ringo

 

わたしは偶然が好きなんですけど、赤塚先生が満州時代を生き延びて引き揚げを生き延びて、漫画家を志すまでは必然でも上京は偶然で、社会風刺を仕事の中核に据えることになったのも墨汁一滴もたぶん偶然でおそ松くんという漫画が六人兄弟の漫画になったことも彼らが主人公としては鳴かず飛ばずだったことも、そしてそれ以降の赤塚漫画のすべてと赤塚先生のすべてと、それを読んで育った藤田監督と、生誕80周年記念アニメにバカボンでもアッコちゃんでもなくおそ松くんをピックアップして彼らを大人にしたことのうちいくつかは必然でも、たぶん彼らがああいう性格のああいうキャラクターになったのはキャストやスタッフのいろいろの結果だろうし、わたしがブロガーとして唐突に名前が売れるきっかけになったカラ松くんの悲劇も多分あれ抜きで話を進める可能性だって大いにあったでしょう。

でも彼らはああなったし、わたしはいまここにいて、赤塚先生の自伝を読んでうめいているし、おそ松さんがなかったら、おそ松さん5話がなかったら、わたしいまの仕事してないんですよ、多分。

全部偶然なんだ。

でも、必死で走ったから行きつけた偶然なんだよ。

 

わたしは去年の今頃松野カラ松という存在は知っていても名前を思い出せませんでした。いまは彼が芸術家であることと愚直であることと不器用であることとあやしくもばかばかしい生きざまのすべてに、ありがとう、を言う以外、なにもできなくて、彼が六つ子の見分けのつかないひとりではなくて、彼は彼なのだということを、いまわたしは知っている。

その歴史が作られたのは偶然にすぎない。

すごいことだと思う。すごいことだ。ありがとう。誰になにを感謝しているのかわからないけど。

 

お誕生日おめでとう。「みんなに」じゃなくて「君に」言うんだけど、お誕生日おめでとう。毎日が誰かのバースデーに過ぎないとしても、君は偶然今日生まれて、生まれてきてくれて嬉しい。今日は君の好きなブランデーで(たぶん飲むわけじゃないんだろうけど)林檎を煮ました。