おそ松さんのスマホアプリについてとコンテンツ産業の未来について

引き続きおそ松さんがすごい話を続けますが、わたしは何もおそ松さんを観てくれと言っているわけではなく、いや実際めちゃくちゃ面白いしあれを観ると本当にいろいろな知見や教訓が得られて人間力が底上げされて元気になれるし松はいいぞとは思いますが、家庭環境やハラスメントや人間関係に関してトラウマを持っている人がPTSDで死ぬ危険性も極めて高いし下品という意味では下品なところは数多くあったので全世界の人間が観ればいいのにとまでは言いませんが(ぎりぎりもしくはそこだけ切り取ると明確にアウトな部分が多すぎて世界基準で言ったらコンテンツとして通用しない側面はでかいんじゃないかな……)あとまあ趣味の合う合わないはもちろんあるし君も今すぐ松を観ようとか言いたくてエントリをばかすか書いてるわけではなくてですね、

おそ松さんが大成功をした以上、モデルケースとしてコンテンツ産業を牽引していってほしいんですよ。

だってああいう公式がもっと増えたらオタクでいるのもひとりの労働者でいるのも楽しいじゃないか。

 

さてスマホアプリの話をします。へそくりウォーズ(アンドロイドiOS)とパズ松さん養うやつをやっています。とくにやりこんでないので誤情報があったらごめんね詳しくは調べてください。

・へそくりウォーズ

おそ松さんというアニメの成功のひとつの理由として、ポップに美しく描きこまれた背景美術があると思うんですが、その世界観をそのまま持ってきたタワーディフェンスゲームです。とにかく画面とキャラクターがかわいい。ちょっとUIが使いにくいとは思うんですが、かわいいという点においては間違いなくとてもかわいい。おそ松さん本編はエグくてちょっと……でもキャラや絵はかわいいよね……みたいな感じで挫折した方にもおすすめです。とてもかわいい。

一応メチャクチャ簡単なストーリーがあって、「働きたくない! あらゆる人間から一円ずつ巻き上げたら大金持ちになれるのでは!?」と言い出したおそ松が街でコツコツ一円巻き上げたり邪魔する相手は殴って排除したりしてコツコツ頑張っていたところ(そのリソースで働けよ……)導入部で「いやそういうのはどうかと思う」と真っ先に反対していたカラ松が見かねたのか来てくれ(※ステージクリア報酬)その後チョロ松もステージクリア報酬で来てくれて、あとの三人や両親やチビ太やエスパーニャンコや聖澤庄之助はまあガチャでおいおい……みんなで絶対金を巻き上げて行こうな! みたいな話です。東京で巻き上げ終わったら大阪へ北海道へ沖縄へ、そして海外へと……という壮大な展開を見せていますがやっていることはひたすら1ステージにつきせいぜい千円程度(ゲーム内通貨なので「コイン」ですが)を巻き上げている、ただそれだけ……。しかも巻き上げた金は次のステージに進むために強くなるため消えていく……不毛……。

ものすごくおそ松さんらしい、くだらない内容で、「なぜニートが必死で戦っているのか」という前提がきちんとしており、「労働は不毛」という作中感覚ともリンクしており、そのうえでやりこみ度は低く、なんとなくぼんやり触ったりキャラを出す順番を考えたり遊び方を工夫したりする余地がある上で「面白いことは面白いけど一日中やっていたいというほどではない」という微妙なところもおそ松さんらしい。

その上で、設定がかなりしっかりしていて、「おそ松は基本的に役に立たないので家にいて漫画でも読んでてくれ、もしくは延々と最前で壁やって吹っ飛ばされまくっててくれ」って感じで「さすがニートのカリスマ」だし、「カラ松は公式推奨肉壁でほぼ攻撃しないけどひたすら兄弟を防御し、しかし足が遅いので弟が出揃った頃には蒸発している、あと一松よりちょっとだけ足が早くて寄り添って庇って死ぬ」「チョロ松は金を注げば一番バランスが良く足が速くて使いやすい」「一松は鈍足だしすぐ死ぬけど大量に出せば敵に触れられる前にジェノサイドするので頼れる」「十四松はとにかく高速で移動しすぐ吹っ飛びそしてまた高速で突っ込んでいく」「トド松は大量に出しさえすれば火炎放射器だが出撃コストが高い」

あまりにもおそ松さん本編通りのスペック(というかおそ松やカラ松は本編準拠なら喧嘩自体は強いはずなので思うところあって手を抜いているとしか思えないので本編通りのメンタリティ)です。すごい!

というわけでへそくりウォーズ、ぼんやり触って楽しく本編の再現や本編でできなかったことの再現などをやるおままごとゲームとしてわたしの周りでは扱われています。お勧めはドルオタチョロ松がレーザービームで街を陥落させているところを楽しそうに眺めているホワイトデーおそ松(銭湯おそ松でもいいと思う)の後ろで長男に勝利の花束を渡すため立っているホワイトデーカラ松だよ。ホワイトデー期間終わっちゃったけど。

なお今期間限定で(明日まで)24話ネタの「独り立ち」がガチャになっており、独り立ちカラ松が欲しくてたまりません……。課金したいのはやまやまですが別件で松に貢いだので金がありません!

あとウォは最終回後の最終回おめでとうイベントに「地方民でも大丈夫最終回のネタバレはないよ!」ってやってくれたのがあまりにも最高だった(独り立ちガチャでした)。

 

・パズ松さん

「同じ松を三人そろえると消えるよ!」というパズルゲームなんですが、「同じ松を三人そろえると消えるよ!」の時点で相当出落ちなんですが、難易度が上がるにつれ「色分け」がなくなり最終的に「シルエットクイズ」になります。見分けつかねーよ。超くだらない。最高。

おそ松さん、2話3話くらいまで「どうやって見分けろと!? いやわかるけれども!」と喚くのが通過儀礼の作品なんですが(六つ子だからね!)7話くらいまで観ると楽々と見分けられるようになりますが、最終回まで観てもはやキャラのシルエットを見ただけで、というかこの絵を見てすら「あ、はいはい、もうわかるわ」って言うようになった訓練されたファンがパズ松をやって「見分けがつかねえわ!」って喚いているのは相当面白いです。観始めた初期の追体験ができるというか、「忘れていたがあいつらは六つ子だしそっくりだ……」と思える。というわけでこれは観終ってからやったほうが楽しいゲーム。

画面構成自体はウォほどスタイリッシュではないけどSDイラストがもちもち動いているのはかわいいし、松を三人そろえて消しているたびに「キャラクターを消費している……六つ子はちゃんとキャラクターとして独り立ちした……消費されている……」という気分になれるし、イヤミが毎日ログインボーナスをくれてパワー切れしたら教えてくれるのもうれしい。あと「推し松の親密度を上げる」ことができて(親密度が上がるとポイントボーナスやスキルが増える)、正直別にスコアを上げるより親密度を上げて「推し松と親密度が上がった……」というぼんやりとした幸福感を味わうのが目的でパズルしてるところある。

これも「見分けがつかねえよ!」以外はわりとぬるいゲームだと思います。やりこみ度は低い。ただ新規絵がばんばん出るのでガチャを回したくはなる。新規絵だしぽいんぽいん跳ねるし親密度が上げられるので楽しいけどでもそれだけっちゃそれだけなので回しても回さなくてもどっちでもいい感もある。

そういえば「推し松」という言葉自体、もう慣れてしまいましたが、出た当初は「推し松て」ってめっちゃ面白かったね……。

 

・養うやつ

養うやつのゲームとしての正式名称は結局なんなの……? 「選抜会場」って言うけど別に選抜会場じゃないし……。

上記ふたつがゲームとしての面白さは普通か普通よりちょっと楽しいくらいになっているのに対して、このゲームは単なる作業です。推し松(また推し松……)を選ぶと六つ子のひとりが突っ立っていて、触るとアニメ作中の台詞を喋る、触り続けると喋る台詞のバリエーションが増える。飼ってる推し松の隣で内職(造花作ったりする)のボタンを押して放置しておくと何もしなくても時間経過だけで内職が終わって金がもらえる。もらえた金でニートに服が貢げる。以上。

シンプルな上作業以外の何でもないゲームでやりこみ度もクソもなく達成感すらあるかといわれると微妙なんですが、何が得られるかというと「ニートをひとり飼っていてそのために働いているという確かな実感」という不毛な感覚です。しかも聞いたような台詞しか言わねえしこいつ。

ちなみにわたしカラ松くんをいま飼っていますが「カラ松兄さんってこんなに悲鳴と不満ばっかり漏らしてたっけ……」という気持ちになり梨がどうとか痛いってなんだとか言い出した日にはおなかがキュッ……ってなります。飼ってる感ない……監禁してるみたい……ほかの松を養ってるみんなが上げるスクショはもっと楽しそうで……ヒモ飼ってるっぽいのに……。

つまりこれ、「ひとりに焦点を絞って台詞を反芻した場合、彼にとってニートの生活はどんなものだったのか」の追体験ができるゲームですねって一日くらいつつきまわしたあとで思いました……。

この台詞はどこでいつ言ったどういう文脈の台詞かわかる人ほど楽しいと思うし、「なるほど、推し松が違うとこんなに景色が違う」と思えると思う……。

カラ松担が前世で何をしたというのだ……(という気持ちに久しぶりになった)(いや本編にも扱いにも何の不満もないんですが、おなかはキュッてなります)。

 

 

というわけでこれらのゲームに一貫している姿勢は「やりこみ度が低いがゲームとしてそれなりに面白い」「課金しなくても楽しめるが課金しようと思える要素はそれなりにある」です。

というのが大変よくできているなあと思いました。

 

いわゆるソシャゲというか、ぽちぽち作業してマラソンして課金してガチャ回してトレードして……というたぐいのゲーム、モバマスやパズドラをはじめとしていくつかやりましたが、あとガチャはないけど刀剣乱舞もやったし、どれもそれなりに楽しかったのは楽しかったんですが、この手のゲーム、いい加減「楽しい」と「作業や課金の苦痛」と「無」があまりにもワンセットすぎやしないか。パズドラはその辺バランスが良かったですが。

「jpgがもらえるだけじゃねーか」系の批判に関しては「jpgは捨てる手間なくていいだろうが!」で返して終わりでいいとは思ってるんですが、しかしソシャゲに時間を縛られ、つぎ込んだ額で殴り合い、シナリオを読むために心を無にしてひたすら作業をするゲームによって金を動かす仕組み、絶対そのうち無理が来ると思うし、疲れたのでソシャゲやめたんですよ。

そういう意味で松のゲームは、「ゲームなんかやってもやらなくてもいいよー金なんか払っても払わなくてもいいよーいちいち一時間ごとに確認しなくていいよー適当にやりなよーそこそこ面白いでしょ」みたいなゲームしかリリースしてなくて大変気楽に遊べるしこういうのもっと増えてもいいんじゃないかね……と思いました。毎度言ってますがコンテンツとして成功したから金と余裕があるから、あと作品自体がそういう雰囲気だからが前提ではあるとは思うんですが、でも、遊ぶのも生きるのも、本来、もっと肩の力抜いていいことじゃなかったですかね……。必死でエンタメ消費しなきゃいけないのって、なんなんだろ……。

もっと「やってもやらなくてもいいけど、やると結構楽しい」という姿勢で様々なことが円滑に動くようになったらそれに越したことはないのではないか。誰だって本当は無意味に働きたくなどないだろう!

 

というわけで、おそ松さんのゲームは「肩の力を抜いて遊べて、肩の力を抜かせることに成功している」事例としてよくできていると思いました。さすが松公式なにをやらせてもそつがない。

 

うちで養ってるカラ松くん、最終的にポジティブな台詞しか言わなくなるみたいな仕組みになってないだろうか……。