魔女

今夜のお茶はレモンバームとオレンジピールにローズマリーを少し。ローズマリーは入れすぎないこと。ブレンドハーブティーを淹れるのがすっかり上手くなり、ハーブティーのブレンドを自分でやっていると、「魔女」と思う。乾いた草を組み合わせて、美味しいお茶を作って、すばらしい香りのなかで夜を過ごして、精神をコントロールする。魔女。

24歳の時、パニック障害になった。

図書館司書を目指して非正規で働いていた。いろんな雑用をしていたが、図書館の地下倉庫に廃棄処分される本を捨てに行くのが主な業務だった。なんだか少しずつおかしくなっていき、多分わたしは図書館で働くのが向いていなかったとわかったときには、海に飛び込むことしか考えられなくなっていた。

海に飛び込むより病院に行った方がいいとぎりぎりで気付き、病院に行き、ついでに躁鬱もわかり、病名がついてみるとずいぶん子供の頃から不眠と躁鬱の症状が出ていたことに気づいた。

今日は病気の話をしようと思ったのではなくて、パニック障害の薬を飲み始めたらコーヒーが飲めなくなったという話。ハーブティーの話だ。

今は症状が治まっているので、コーヒーでも紅茶でもウーロン茶でも緑茶でもココアでも栄養ドリンクでも何でも飲むのだが、当時はほうじ茶のカフェインでも具合が悪くなった。15年前は、ハーブティーが飲める店は少なく、たまに誰かに誘われて少しいい店で食事をするとカフェイン(か、アルコール、アルコールも薬の関係で飲めなかった)をワンドリンクどうしても頼む必要があって困ったものだった。頼んで口をつけなければいいのだと気づくまでしばらくかかった。

ハーブティーを売っていそうなあらゆる店でハーブティーを買った。複雑なら複雑なほどよく、知らない味なら知らない味であるほうがよかった。自分は劣っているから壊れたのではなく、代替え品を探しているのでもない。わたしは未知の味を求めて見知らぬ名前のハーブを探しているのだ。そう思うことが、あの頃、必要だった。

二十代から三十代までは嵐のように過ぎていったが、ハーブティーを美味しく飲む能力は順調に上がった。ハーブティーを飲むのが趣味になってわかったが、ハーブティーのことを単なるお湯、あるいは色のついたお湯、あるいは一応匂いのするお湯、だと思っている人は多い。体質や嗜好や色々が関係しているとも思うが、多分訓練も必要なのだ。

こんなにも香りが高いことも、こんなにも複雑な味がすることも、訓練しなければわからなかったと思う。

悪くない15年だった。なかなかいい三十代だった。美味しいハーブティーも淹れられるようになった。魔女をやろう。もっと上手に。