内側に骨
友人が、キーホルダーを鞄からぶら下げていた。骨の形をしている。布を縫って綿を詰めた、いわゆるぬいぐるみである。骨の、ぬいぐるみの、キーホルダー。 見ていると気づいたのか、友人は鞄に手を伸ばし、キーホルダーを持ち上げて、言った。「これ、わた…
ちょっとした話日常,物質
バクと暮らす
たとえば。 誰かと話しているときに、上手く説明できなくなることがある。たとえば、と、言葉を繋ぐ。でもその喩えは、具体性を欠いていて、伝わる言葉の形を取ってくれない。わたしの心の中に住んでいる、一匹のバクの形を、説明してみたって、そこにある…
ちょっとした話さびしさ,不思議,密やか,日常
龍になりたかった
川の奥、上流の、山の中に入っていくあたりに、あの子が佇んでいる。みんな、あの子なんていない、木がそう見えるだけと言うけど、ほっそりと立つ髪の長いその子のそばまで、泳いでいきたいとずっと願っていた。 川は広く深く、渡った橋の上から、年嵩の…
ちょっとした話不思議,密やか,愛情
愛される役目
マッチ箱ひとつを大切に持っている。中にはマッチが一本入っている。赤い頭に棒がついた、ごく普通のマッチ。手に入れたときには既に、マッチ棒が一本入っていただけだった。これを宝物にしようと思った理由はない。ないというと言いすぎかもしれない、これ…
ちょっとした話密やか,愛情,日常,物質
兄
王子は河原まで辿り着くと、息をついて、服を脱いだ。体を覆っていた絹の服を一枚一枚、川に流して、一番下の肌着だけになった。でも肌着すらも金の刺繍が施されていて王子が王子だということをしめしていた。王子は仕方なく、肌着を脱いで、はだかになって…
ちょっとした話ファンタジー,不穏,家族
隣の家の晩ごはん
隣の家で作っている料理の匂いがよく漂ってくる家だ。ということは我が家で作っている料理の匂いも流れ込んでいるはずだ。今日、我が家ではカレーを作った。次の日、隣の家からは何かを揚げる音が聞こえた。つられて、芋を剥いてフライにした。なんとなくぼ…
ちょっとした話交流,日常,穏やか,食事
黄色い部屋
その店には入り口が三つあり、それぞれの入り口が、ひとつだけの座席に繋がっている。赤い扉、青い扉、黄色い扉を抜けると、赤い部屋、青い部屋、黄色い部屋に出る。私は黄色い部屋が好きだ。黄色いと言っても、黄色いクッションがひとつと、デスクランプの…
ちょっとした話不思議,密やか,日常,穏やか,空間
目の前にある花
『アンダーカレント』後 神狩と浅野と週末の過ごし方
離レ森閑話