外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

Ⅳ 圧倒的展開(あなたにわたしは見えていますか?)『ありがとう敵』

ぬるまゆに浸かると割れるあかぎれのような七日をありがとう敵

チョコレートバーを齧ってHEROになるってずいぶん簡単だった

踊りかた覚えた子供のままでいた最後の夜にあなたと話す

紡ぐのは悲劇か喜劇か端的にdeus ex machinaだろうか

ともだちにさよならしたの両手ぜんぶ塞がってたからさよならしたの

お弁当のなかみはハムと約束を挟んだパンとあたたかいお茶

テレビには猛吹雪だか砂嵐だかわからない人影がある

すくいのないこどもがみんなで歩いてるみちゆき少し優しい闇夜

おかえりとおさなごに言う母じみて世界の終わりを静かに告げる

僕たちがいずれ死ぬっていう罪のない世界なら天国かなあ

本物の箱庭なんだ全員が家族になれる真実なんだ

「善い子にはならないつもり?」問うたのはどちらが先であったのだろう

いつまでも愛しているよ花々のやりとりをした木漏れ日のまま

布を抱くように我らは翔びながら小さく輝く終わらない星

よかったよ ぼくの記憶のなかだけに迷子の子供がいるんだったら

終焉に立っていたのはHEROでありたくなかった小さな子供

ぼくの名を善となしたるあらゆるに祝福をする箱庭の朝

フローフシ、ぼくたちたぶんこれからもどこにでもいるね、かわらないね

全員を敵だと思え るならば閉ざされたたったひとりの庭にいられた

撃てなくて泣いて震えて目を閉じてごめん最後に敵ではなくて

箱庭にぼくの友人たちが住むことの完璧おやすみなさい

もう二度とありえないかもしれないね 背中を見たら背中を向ける

ごめんねを告げるエゴだよ 無垢でいた「幸運」という罪と罰なら

とりかえしのつかない日々だ 閉ざされた森を燃やして僕らは生きる

俺たちが見知らぬ子供であった日がもうわからない愛してるから

幼年期終えて旅立つ世界とは巨大な庭で出口はないの

新しい記事
古い記事

return to page top