外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

実在

実在 Ⅰ 裏庭を捨てる
しあわせで定間隔で斬新で追いつくな恋追いつくな恋 甘酒を飲めないままの十二月神社仏閣どれも嘘つき ミステリの各章最後のひともじを拾って残りは全部捨てろよ ほらごらんぼうやがてのひらおっことしにどとからだは成立しない 平板 […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『自殺未遂』
リアリティラインの違う青年の自殺を見ている ラム酒を飲んだ イカれてるんだよねもっと聴衆を叩き潰してくれるんだよね 平行の白を唾棄せよ現実はひびわれてゆく落下の過程 正しいも正しくないも揺さぶって運転手さんの舌打ちが鳴る […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『ねずみの嫁』
おしごとでやっているんでしょ?年齢は?うちのねずみの嫁にならない? 毎日をねずみの卵を百個産むノルマをこなしながらにこにこ ずるいうそばかりついてるあなたなら家じゅうの巣を新調できる ねずみのよめ ねずみのよめはどこにい […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『閉所恐怖症』
ねむれないこどもが布団でつぶやいた短い詩文を捏造しよう いまそこで鳩がわたしを見ています。そしてわたしはここにいません。 窓のない国を地獄と呼んでいたかなしい子供がまだそこにいる 窓枠が四角いことが気になってどうにか歪め […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『二度とひとつのものになれない』
音のないあなたのなかで生まれたの なんにもないのほんとうの意味 べつべつの人間になる扉には鍵がかかって喉のおくです ほむらには観覧車で見た不確定事項を投げてふたりはひとり 笑いながら「あなたの家を焼く」という黒猫を見た  […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『ラグナロク』
神様になるってことはお祈りで生きるってこと約束をした あいのうた いきのびるうた にんげんの しんぞうのおとをわたしはにくむ もう二度とわたしに会えない朝ですとねえさんが言う水蜘蛛に言う 裏庭はここにありますお父さんラグ […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『日給二千円(交通費込)』
一時間五百円の計算のケーキで購われたわたくし 重要なパーツをなくしたような朝コーヒー味の砂糖を飲んだ 神様に生まれついたら忘却の権利を買うため生涯あるく 父親になるためにつけられている細長い嘘が映る鏡 父親はあんなかたち […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅱ 自殺者一名 『自殺者一名』
隣人を吊るせ吊るせばオレンジの叩き伏せられつつある夕日 サンデイのアフタヌーンになめらかなハニーミルクをぜんぶこぼした たんぽぽのわたげとなった朝のこと不穏なあなたとわたしの別れ 誕生日、兄はわたしに電飾をわたして孤独に […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅲ BADEND 『狙撃手』
うつくしい夕日があれば我々は個人が個人であるままに撃て 勇敢な戦士となって味噌汁を煮る力を朝、装填すること 性行為じみた相互の戦歴を数値化される淫靡の教室 好きなもの嫌いなものを選り分けた筆頭に立つ崇高を蹴る 黄泉からは […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅲ BADEND 『たすけてよ』
しゅうちゃんのこと好きよって言っている呪いが解けていない街角 たすけてよ たすけてよ ねえ あのときは選んでもらえなかった僕を 他人には縋らないこと雨の日は残った湿度が消えてゆくこと どこからも救いのこない廃墟にてわかり […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅲ BADEND 『ゆういちくんのおよめさん』
振り返ってそこにおまえがいることと明日はきっといなくなること 誰ひとり誰かを救ってやれなくてただ単に雨 血の味の雨 きちがいを見つけてしまう まるのままかわりに生まれたみたいに似てる いままさにおまえを殺してしまおうと思 […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅲ BADEND 『耳の良い子供』
たすかった。動物園へ何回もこれから行ける子供になった。 密室に追い込まれるとき安らぎが微小な音となって振り積む かみさまにどこか似ている鈍感を撫でてとなりでわらってあげる 湿ってた 人間の首森の音おまえの呼吸ここにいるこ […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅳ バラ色の日々 『天国旅行』
それだけの話でしかない煙を嗅いでいる男ふたりの枠で 剥がれないシーツの永久がない国の王とおまえは笑って呼んだ 戦いの日々だ装填したままの意思に長いお別れがあっても 絶望が甘いってこと地獄には愛しかないこと 名推理 言いが […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅳ バラ色の日々 『缶コーヒー』
「そんなことすると思った?夜更けにはさよならをしておしまいなのに」 赤かった糸が黄ばんでいくまでの日々があんたとおれであります ゆめをみたままでおまえを抱いていて世界の全てが遠くてならぬ ざくざくのなかであんたは笑ってて […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『ちいちゃんの町』
「うわほんとめっちゃ近くにあるんだねこんなちまちました町なのに」 医者学者政治家などをはきだした高校のある母のふるさと 母親の地元の町の高校に三十点差をつけられた夏 冒険をしたかったのねあの橋の欄干の上を歩いたあなた 「 […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『ファルス』
おれたちはひとつのものになったからあんたは俺の妻だと部下が 事実上2Pと呼ばれるセックスを拒むわたしと部下の夕闇 部下の声で夫がわたしを呼んでいて演技はやめてと叫ぶわたしは あかねさす日曜の朝通販でオーダーメイドのフォー […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『ソーシャル・ネットワーキング・サービス』
夜が来てぼくの話は聞こえてる?あのね、ガール、これが愛だよ 肯定は麻薬だ飛行機のなかで飲み干しておくべきだったんだ うたうときわたしは自由な空白のざらざらをただ撫でているだけ どこか似た鞄を遠くでしょっていることのラッキ […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『神の内面に寄せる』
わたくしはたんなる職業芸人で花を折るのが早かっただけ 早口で喋っている時内面はしずかなしずかな闇の色です 非表示にしてるんでしょう? 神様でいるってことは憎まれること 大多数わたしを愛する場所にいてひゃくいちにんめにすが […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『海辺のふたり』
憎んでるわけでもなくて海辺には影が長々死の床につく 沿線を最後までゆく終着に執着駅と吐き捨てて夏 問いかけを投げれば海があるからと答える水着 愛ではなくて ひからびたやもりを庭に埋めている背中に投げる膨大な嘘 「戦争が終 […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『島買いの日』
いっぱんとよばれるぼくらの選択が来年もまたペンに力を カタログをひとこまひとこま見つめつつどうかあの子の名前を呼んで あのひとは実在してるひとですか選んだ香りはお好きでしょうか ブックマーク百を超えたと苦笑い だってぜん […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『手搬入の朝』
軽くなれ軽くなあれと念じつつタイヤを連れて手搬入の朝 ぼくのこと知ってる人は来場者五十五万のなかにいますか 敷布は黒がいいよと言われてもぼくはやっぱり黄色をえらぶ やりかたを覚えて長し列整理となりが大手かもしれないし あ […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『号葱切』
かたなには名前があると知らされた冬に家出の準備はじめた 三十年凝った澱の増減を指差し確認 引越しの夜 指差した地図に神の名あり窓の外にもやはり神の名があり オゾンホール以西に引っ越すため箱をイオンモールで拾い集めた バス […](更新日:2015月8月15日)
実在 Ⅴ 実在 『PAPER MOON』
真円を描いたその中心におまえを置いて炎を放つ チラ裏 シナリオライターの落書きをひともじひともじ拾って舐めて 燃やせないごみの山から足首をひきずりだして口へはこんだ マッチ売りだけを救ってやってくれ からだのすべてがあか […](更新日:2015月8月15日)

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