外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

神様に生まれた罪

Ⅰ 少し長めのお別れ『ジャンヌ・ダルク脱獄』
まっくらなくうどうのなかぼくたちが既に別個であったおもいで 「だってここで、さいごまでぼくら繋がってたんだよ。全部がはじまるほんのすこしまえ」 じめついていさささかあたたかすぎている何らかのメタファのような冒険をした 一 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅰ 少し長めのお別れ『ピーター・パン着陸』
めざめると僕は世界の中心に突っ立ったまま口を開けてた かわいくておとなしくって夢見てる宇宙から来た天使のような 羽根について夢を見ていた 鳥の名を与えられたる特権として 世界中馬鹿ばかりだと侮った原罪の色をしている猫が見 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅰ 少し長めのお別れ『ようやく一度目の来世』
死ぬことさえできない罰をはじめから抱えたかったわけじゃなかった 百万回生きてみたいな そのあとは君の名前がわかるだろうか ぼくのぶん差し出されてる現在は合成着色青色一号 にげるのもめんどくせえよばかみてえおれのぶんぜんぶ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅰ 少し長めのお別れ『選択的色盲手術』
優越と愛と恥辱と絶望と馴れ合いと嘘とそのほか全部 間違ってしまったのはぼくのほう 奪い合うよりも与える汚泥に逃げた 赤色の名前を持った神様のぶんの衣装に触れる手のひら 「世界には二色だけある。赤色と、それ以外は全部緑、俺 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅰ 少し長めのお別れ『子羊』
唐突に空の色から逃れられぬ閉じ込められた王国を知る 「いくら?」「二千円」「おまえを兄と思ったことはない」「じゃあ何?」保護対象。 灯油缶ひとつぶらさげ夕焼けを見ている俺はここにはいない 罪人として生きてきた証明としての […](更新日:2017月8月15日)
Ⅰ 少し長めのお別れ『神の子』
薔薇は赤い。薔薇は赤い。薔薇は赤い。これから世界の改変をします。 「おまえは黙ってろ。俺が全部やる」「おまえはなにも知らないんだな。かわいそうに」世界の改変をします。 生み出されて俺の体の一部分にされた全てを 改変します […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『心室』
「恋愛の定義がわかる?」「試してみる?」「わかった?」「たぶんすこしわかった」 「大好きって百万回ぶん言えたならぼくを嫌いと言ってもいいよ」 心臓を取り出して抱く それ以上近づける方法論が探り出せずに ゆうやみに紛れた死 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『アダルトビデオ』
「昼下がりの情事って知ってる?なんだっけ?映画?それともおれたちのこと?」 あかるさに割かれるほどの心身のケガレをかいだん段ごとに置く きみのいる街って呼ぶ時きみという任意のnの名がわからない 完璧な音楽のある喫茶室、完 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『ファントム・オペラ』
ふれあったこぶしとこぶしのかたときを永遠にしたあの日のぼくだ 終わらない螺旋階段をのぼってる 空洞しかない恋の城にて もうだれもここへはこない青い城満ち足りたまま王は眠れず こんにちは、王様。きみが死ぬ時の秒針ここに持っ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『神様の言うとおり』
あなたには内臓があるということを確認をするための儀式だ 肉塊をはさんでふたり。「お姉ちゃんを取ったりしないよ」悪魔。 君の名を肉塊を呼ぶことからは導き出される肉屋の機械 「録音したテープを返してくださいときちんといえたら […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『歩行者は安全』
もつなべを食べに行こうと言いました。夏の夏の夏の日でした。 みぎ ひだり 手のひらを出して問いかける「違いはそろそろ理解できたの?」 さらば敵よ愛よ希望よ大切な蝉の抜け殻たちの聖地よ 「恋愛は終わったつもりか」「そもそも […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『御者座』
神の住む星でおまえを人間となづけた俺の名を記憶せよ 「こいつねえツンデレだから、俺、全部、知ってる、俺は友達だから」 感じないはずなんてない指先を保護する脆弱性感知せよ 俺は目にみえる影だよおまえすら凌駕した声わらう わ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『塩素自殺』
ぬるま湯にまぎれてごらん時計草もう臭わないもう大丈夫 嫌いならそれでいいからわたしからデオドラントのスプレー取って 十六夜あなたがわたしを見つけたらそのとき処女がおかされてゆく きまぐれな夜光虫からのがれるため布団をかぶ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『とある少年の一日』
この展示品は不正義構成のそのものを保管しているものです 唐突に死後の世界の喪失の話をしてた只の空白 表札を食べてみますか 千年前生きて歩いていたらしいです 「マーキング?」言われた意味が分からずに笑ったまなこが「べつのに […](更新日:2017月8月15日)
Ⅱ エンターテイメント『うしなわれたかたわれによせる』
玉砂利のある海でしたあなたには相槌ひとつ残らぬ破片 暮れてゆくゆかない柿を追いかけて追いかけてゆく階段が泣く 内省がないと断罪する前に確認をした?舐めてゆく螺子 真っさらなシーツを眺めて「たぶん君に似ているところがないも […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『粗熱』
塗りつぶすように悪夢は紫の頭痛によく似た重い停滞 なにもないわけでもなくてただひとつ気がかりなのはわからないこと 「あなたには富がある」とそう、告げた時わたしはいったいわかっていたのか 分配を憎め。あるいは悲しめ。せめて […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『さいわいの硝子』
唐突に罪人となった朝が来て早く、誰か、僕を、指して ひとり死ぬところを見たよ僕たちが並行世界で笑ってたころ ふたりめが自分である日を祈ってる、君が「フローフシ」であること 夢でみたような気がした死に様を君に見ている煉獄、 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『手づかみ』
迷子にはなれずにわたしとこれまでの街で続きを始める契り 夏の日の扇風機にはかき混ぜる能力がある最高湿度 麦茶、畳、薄くなった敷布団、蝉、背中を滑っていく汗のこと 食べ物のようにあなたの指潜る人体という密室に鍵 暴かれてゆ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『クローズド・ミステリ』
いつかくるあなたの死から目を逸らす最適解を知ってる 真昼 ベランダで落とした線香花火にて終わったわたしをすぐにたすけて 「いつまでも生きているのは怖いけどあなたがいつか死ぬのが怖い」 ヤバい罠だらけの世界を生きてみてほし […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『しんきろう』
溶けている真夏にあなたの指先を飲み込んでいる畳には水 噛まされたタオルがじっとり重たくて今月今夜の記憶喪失 真昼には許されていない肩を抱くことを夢見る公園にいる 公園を横切っていく夕暮れを抱くやらしさをあなた、まだなんで […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『お帰りなさい』
神様ではないあなたの証明を完了できない午後零時半 だめだった、いつか始まる伽藍堂破壊工事の無期限延期 あなたのはチーズを詰めて冷やしといたみたいな白い魂だった まっ暗いロビーの奥を見つめながら今生最初の背筋をのばす マザ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『パラレルワールド』
気がつけば同じ道路の中央でたぶんあなたを待っていました 「もう二度と帰らぬあなたを待つ夜は来ないっぽいし、もう、いいんだよ」 ありきたりできれいな嘘をついている 並行世界なのかもしれない 手を繋ぐために生まれたことを知る […](更新日:2017月8月15日)
Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『夢幻境にて』
子供たち、見知らぬ街にゆきなさい、あなたはだれでもないものだから けだものの名でわたくしを呼んでいるおとこのことを考えていた 間違ったつもりはなくてただ単にゆめまぼろしのうたかただった dreaming,あなたはいつかわ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『おれはおまえの光だ』
憎悪とはどれほどの名かきりとった爪を一片ふみつけている 「ひかり」とよぶおまえの声に忠実に笑った凝った熱をおびた臓 ししむらをさぐりゆく指土下座して済むものならばもう死んでいる 愛をもってすべて許すというならば生きるって […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『月と狼』
ほんものがわたしの先にあるというナイフを掲げる 何も見えない 舌先にざらつき とうとう鉄分が脳まで回ったようでうれしい 明日きみがわたしを気遣う中空を予め撃つコンマ数秒 神様になれると思った? どうやって? わたしをぱく […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『背骨を舐めた』
有罪だ! 有罪だ! とは道をゆく人の声なり床は冷たい おもうのはあなたの背骨をまっすぐに抜いたあとには何が残るか そもそもが世界に背骨があるという錯覚自体暴かれたのか? 条件を制限せよと指示通りチェックを入れる ヒット数 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『完璧な王国(ディストピア)』
つるつるにすべりおちたら王国はやさしい影におおわれている 天国、天国のような、天国、どうも砂糖菓子でできてる 寒すぎる憂鬱に泣く不自然な子供を見ている小さすぎるよ 最初から始めるときは右を見て左を見てから手を上げましょう […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『KISS』
集まっているみたいだが正体は不明の単にきれいな十分な嘘 澱さらうスープストックの表面の夜風のようなはりつめた膜 この街はもしや天国ではないかなどと誤謬をあえて留め置く まず水の飛沫を拾い集めたら糸を通したあとすぐ捨てて […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『赤いしたたり』
ゆるされない生者を生きる生きてゆく生き延びる罪のコンビニ弁当 正しくは迷子ではなく夕凪の空耳にならわかる審問 まだ僕は落下を続ける血しぶきのなかからおまえを救えずにいる 喪失の午後だ母親殺しには行けないままで窓には豪雨 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『剃刀の夜』
まず眠り。そうして始まる毒薬についての短い話をしよう 青空はどこにもないか智恵子よ我々のさざれてなくなる眠りのなかに 迷い家にたどりついたら花たちのにおいをたよりに歩き続けよ 鏡なき国の破片をとらえればあなたはわたしの顔 […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『言祝』
雑音がなかったような王国をあとにしました 目を閉じました まちがいのないことばかりがあるわけでないし楽しい暮らしをしよう あなたからはじまる先にある糸の意図からのがれえぬもの 遠ざかるわたしとあなたの垣間見のしるしをつけ […](更新日:2017月8月15日)
Ⅳ 神様に生まれた罪『神様に生まれた罪』
世界には始まりがあり始まりは何も知らない白痴の闇夜 ゆううつな夕に見ましたつま先の爪のましろの船を見ました 陽炎よ足りない嘘をもう一度そうもう一度浴びせかけてよ ほんとうはぜんぶをなくした王国に行けたら泣いてもいいんです […](更新日:2017月8月15日)

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