外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅳ(百万年) ワールドエンド

ぼくたちが並行していたあの日さえ世界のすべては不足であった

本屋がない町で西方浄土から流れる音楽を聴いている

がしゃぽんの空容器ひとつ仕舞われて世界の果てでまた会いましょう

移動図書バスを見送りさくらちるおやすみ、世界、木曜日まで

空を飛ぶはずじゃなかった午後の陽に聴衆すべて目玉が白い

木曜に返却予定のマルケスの栞の位置がもうわからない

怒りなら足りてたはずだ牧場を満たすCO2に混ざって

教養があると謗られ我が背子のちりぢり壊した螺子を拾った

メーデー メーデー だれかたすけてよ 信号の青に踏みつぶされる

まぶたには光が落ちて雑踏で見上げた空に僕も消えよう

鉄骨にびょうびょうと吹く青がある空から割れる日を待っている

弟の心臓よわく火をいれて楽しい宴はじきにはじまる

ぬかるみを歩き続けるような国ここで滅びる俺の骨髄

生命の定義にしたがい延命の措置をとりますねじのかいてん

ハリボーの赤いリボンは硬くってだあれもほどくことができない

はつはるの新玉ねぎをさらしおく 痛みがひとつも残らないよう

いじめっこならば殺してしまっても閻魔さまには叱られないね

狡いなと言ったきりでおしまいの 持ち逃げしたのはあんたのほうだ

おひとりさまひとつかぎりの嘘を買い冷めてゆくまで膝に抱えた

細胞のいっぺんだけでいいんです交換したら忘れますから

二割引きシールを集めているからと言い訳をする相手もなくて

発疹がわたしの首に満ち足りてここからみんな生まれたのです

つま先を食いちぎる朝もう二度と立ち上がらない誓いを立てる

セックスができたらきっと救われる みんな入って 火がつきますよ

進行はしていますかと聞いてくれレゴブロックの色を揃えて

蛍火を探し求めた父さんを押し流してた川のにびいろ

ぐしゃぐしゃ に かきまぜられて これからは 死ぬまで火を通し つづける

新聞は健康に良い灰色のインクで窓をきれいに磨く

爆破 爆破 こわされつつ浮上した扉の開いた向こうの空を

ひさかたの光り輝くtextのバックアップを取ってください

川沿いの蛍火いつか流されてそれでもここをふるさととする

あまくてつめたい。救いのまぼろしを追いかけたまま、あまくてつめたい。

夏坂ですれ違う時俺の身に影を与えたするどい背丈

なだらかに流れていったまたたきの逆向きにゆく乗合バス 夜

解像度を下げる。わたしはなにもしらないなにもしらないなにもしら

どうとでもしてやるんだと唸る夢 まずはまばたきから思い出す

メビウスのねじれたところを通るのはとてもさむくてみんなこわいよ

チャンスをあげる 日曜零時まで笑っていればあなたは生きる

あかねさすファイアウォールのかなたまで腐肉を拾いに行かねばならぬ

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