外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅴ(架空の少女を殺害する話 あるいは宮本恭介について)

磨かれた鉄釘の銀ならびおり各々尖りて武器を構えつ

ベルトさえあれば無敵だ今もまだ俺は全然変わっちゃいない

論述式試験の海のただなかでおもてをあげよ 空があかるい

蝙蝠は恬淡とまだ羽ばたいて春はこの世を捨ててしまった

街灯は寒くはないかその距離が定間隔に孤立したまま

この国で時間を刻むことにした中華街にて時計を買った

煮る潰すまた煮るそうして作られたドロップで向かい風を殺戮

おい磯野野球やろうぜの声だけを抱えてひとりの心中事件

ねがわくば夜行列車の寝台に生まれ変わって朝を待ちたい

おきざりの基礎化粧水指先に浸して考え込んでいる朝

ふとんかわぱんと叩いてそのままに大気を含んで凍ってしまえ

木蓮の散り方真似て立っているおまえは春に死ぬんだろうな

ミキの
こと
こわいって言うおじさんは
煉獄地獄の
百万度にて

空気
なら
全部
さそりの尾のなかで
ここにはないよ
手遅れなんだ

なまえは?
ミキ
かわいいね
汚されていくレース見ていた

冥界に元素はあるか俺たちは死んでも組成が変わらないのか

折り紙のグッピー繁殖終わらせず呪われたのはおまえひとりだ

長男は子供を作る義務があるなどと冗談交じりに姉が

世間知を持つなと叱責する前におまえを殺して葬るべきだ

ざらざらと痛むそれらは錯覚で猫の初恋去勢している

美しい女のためと購った花束駅のホームに捨てた

神々を千人殺せば神の血を全身纏いてまだ神じゃない

ハイビーム受けて立ちすくんでいる足ならとうにあいつにやった

蝶々の解剖方法語りつつお前はどうして笑んでいたのか

罠ばかり作ったようだ一匹もかかっていない不具ではあるが

Uターン禁止の前で煙草に火三月はなぜ終わるのだろう

ミキ だれも 友達なんか いない から 地獄を裸足で歩くの平気

とある朝王子はガラスの靴を手に裏切る空を語り始める

鉱石を溶かしつくせよ賃金は全てレースで支払いおかれ

ミキが死を探しあぐねているあいだ俺は外商部と折衝を

おまえにはミキの世界が見えていてミキには世界は見えてはいない

ミキが十四歳になる春は埋葬しておいたとおまえの手

ゲームだよと先に言われたあしあとを踏めと求める声 ゲームだよ

ミキのなかにひとはいなくて外側で笑う王子様のうたを聞く

身ひとつになるため黒いポリ袋広げてまずは自分を入れた

君のいる街で君の名溶けていく電子レンジで三分でいい

しぐるるや素数ぞろりと並びおりカモミールティーを飲んでいる

雨蛙どこかの道で立ちすくむ夜であるのか眠りが深い

いまだ銃埋めざりしまま傍らの穴の深きに響く空耳

小学校五年の自由研究で大気汚染の終わり探した

白糸で白地に白い刺繍せり 絶対にゆるさないつもりだ

勝負にはならない夜道を追い越してばかりのハイビームをぶちのめせ

バス停で順番抜かしをしたやつを呪い殺せるおとなになった

アイドルになりたい夢は夢としてミキにおやすみ言ってください

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