「はぐきからちがでた」「おれをかんだから?」「おまえばかだな」「そうか、よかった」
真夏には食欲がなく買い置きの砂糖でできた子供を捨てた
体じゅう満ち足りているつま先を壊して光のシャワーをくれよ
つま先を齧りつくした夕映えがひやりと触れる心臓の奥
つま先を触れ合わせている寝室のぬかるみおまえは猫だったのか
ほんとうのことばは全て捨て去って相槌だけを海に流そう
何もかも知らないことなどないという顔をしているおまえの嘔吐
酸の味を分け合うように唇をあわせたままの溺死の方法
ずくずくと心臓だけが残されたあたたかな沼をただ撫でている
夏服を詰めた鞄を放り捨て黒海よ去れ俺は自由だ
もう一度/もう二度と 風呂釜を濯ぐ手つきが尖り始める
電気を消した すとんと降りてくるおまえの声に黒蜜の味
なんどでも同じ芝居を演っている なんべん演っても君は死にます
タナトスを飼い慣らしている四畳半タダイマタダイマゴハンチョウダイ
転がって知っていることだけ話すおまえが語る俺の犬の名
真夏日がぶち殺したるコンピュータゆらりと揺れておまえの声だ
自転車をふざけて倒しそのままにひとつのごみになってしまおう
ことばたちきちんと整列してください早い人には飴があります
もろともに溶けてしまおうリビングにデッドしているゾンビの城で
おまえにはからだはきっと重すぎて魂以外全部食べよう
朽ちてゆく朝おまえに焼くパンの焼き目がきれいで戸惑っている
食べすぎてバクは朝から寝ています恋人たちは消化に悪い
たましいが目当てだなんて搾取だとおまえは笑って傷をひらいた
地平から燃え上がりゆく俺たちの末期の水はくちうつされて
溶け残る砂糖が純粋なのだからうわずみは全部貴様にやろう
俺たちの名前煙のように消えそれが墓碑銘それだけでいい
じわじわと抜け落ちてゆく夕焼けの最後の色を俺にください