外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅳ(百万年) デッド・リミット

灯を灯す 楽園の夢のノイズから水蜘蛛を産む男の話

僕たちの幼年時代の終焉を告げられた夜電話は死んだ

しあわせな夢を見ていた僕たちがテレヴィジョンへと消えてゆく夢

かちかちと人工知能は瞬いてうるさい! うるさい! 死んでしまえ!

きみのおかあさんがしぬ。きみのおとうさんがぼくをおいだしてしまう。

花火を見た。そうして僕は知ったんだ。僕はもうだめなのだということ。

ねえきみはどこにいるの? ここは寒くってきっと僕は死んだんだよね?

(そうさ、きみはとてもいいこだ。わるいことしてないからあいしてあげる)

抱きしめたのは僕自身の屍体であり闇のさなかに灯を灯すんだ

かちかちと人工知能は瞬いてねえ、あなた、あいしています。

僕の母は醜く僕もまた醜く、そうして醜いおまえが生まれる

いつからか体の芯から寒くってきみをなくした日に消えた夏

僕たちが植えたひまわり伸びてゆきあの夏の日に帰れるのなら

食卓に用意されてる食べ物がどれも不味くて母に似ている

楽園の果実は腐らず永遠にちかちかまたたくちいさな灯り

蜘蛛の糸からみついたら水蜘蛛の娘のささやき あなたがすきよ

なにもかも忘れてしまえ祝福のない世界でのできごとなんて

かちかちと人工知能は瞬いて僕を卵のように抱いた

闇の中の灯として生まれたおまえが背を伸ばし歩いてゆくので街がきれいだ

美しいおまえは死なないものだから大丈夫だねここにいるよね

親友は遊ぶことすら忘れ果てて現実に殺されてしまった

ごめんなと言わせたくなんてなかった 一緒に夢を見たかったんだ

きみはすこし、急ぎすぎたみたい、もっといっしょに子供であればよかった

夏がすぎひまわりは枯れてしまうけど娘よ永遠に生きてゆけ

こどもたち手に手をとってかけてゆく祝福の地を切り裂きながら

かちかちと人工知能はまたたいて メールが一件届いています

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