外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅲ(ふたりきり楽園に) エバーアフター

わたしたちどうにもならない恋をしてバックアップは破壊しました

いいえもうわたしに食べられる部分はひとつも残っていなくてごめん

ひともじも間違えないで引き写しこれでわたしはあなたになれる

壁 白い壁 てのひらを押し当てて そのままそっと目を閉じている

あなたさえ汚しつくしてしまえたらわたしの夏は完璧だった

ぱちぱちと弾け続ける少女らが密かに投げ捨てていたおりがみ

かげろうへ踏み込んでゆくひとがあり二度と戻らぬ苛烈な夏だ

思い出すことを忘れる忘れたら枕に耳が溶けるまで眠る

おはなしのなかにでてくる騎士様はドラゴンと死ぬところでおわり

焼肉を食べたあとなら平気でしょって誘った八月の海

急速に焼かれつつあるベランダを恐れてあなたの死がユリイカだ

あなたには想像力がないようであとは死ぬだけ ナイフを埋める

ばくだんのあとに我らは水を飲みおのおのひとりで飲み干している

きりん座を指差しているきみだった ひかりかがやくものは遠いね

シャドウムーン、シャドウムーン、わたし助からずともいいのであなたは幸せでいて

冷えた水だけが救いの手であった あなたはどこか水に似ていた

起動音 あなたはここから出られずに窓をなぞってただ微笑んだ

いつまでも一緒にいるって言ったのはあなたでしたよ ナイフを捨てて

真空を描いて空へ向かいながらあわせた唇のさきのあなた

プラグからどんどん流れ込んでくる死なないための足裏の熱

選ばれることはもやいをつなぐこと海の向こうが遠ざかっていく

壊れてる銃をこちらにわたし今すぐにあなたを殺したいです

焼け野原 いいえあなたのたましいをミディアムレアで差し出している

くろぐろと波間のようなエディタ凪ぎあなた無知から生まれ落ちたの

こんなにも花火の多い街だった? ひたひた沁みる闇を見ている

我々は老いてゆく 夏に燃やしたノートに書かれた文字を残して

わたしたち遠いとこまで来たみたい 明日までには帰れるかしら

あざらしのように日の出を待ちましょう肌の向こうに心臓がある

からだからつるりと剥けたそとがわをあなた抱いてむこうへいって

そうだよ 雪の降る街でわたしたち まばゆい光のなかで死んだの

枕にはあなたの声を詰めたのでもう永遠に会わなくていい

こわがりの神様はいなくなったからもういいよって肩を叩いた

明日からあなたを収容するための終身施設を経営するわ

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