外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅱ(就寝時間) 女王陛下の剣

わたくしはとても醜い人間でシャワーノズルを手で触れない

心臓を焼いてる途中で離籍するのは非道ですデザートに虹

くるぶしのテンパリングは完璧な人形たちが冷えている夜

えいえんに氷のなかで生きること=いまも死んでるってこと?

女王陛下、ここはあなたの王国であなたはこれから死なねばならぬ

わたくしを神となしたるじんみんの全てが雪のひとひらとなれ

わたくしはあなたのための人形です、陛下、すべては御心のまま

うつくしい馬たちを見て笑いながら「おまえはいつかわたしを捨てる」

人形の首をもぎとりはめ直す果てのない夜おまえはわたし

宮殿は閉ざされておりわたくしの人形芝居の糸はもつれて

うつくしくそして無価値な人形だ、そなたはほんにつまらぬ男

完全できれいな国が欲しいのよって笑ってケーキが焼けた

わたくしの神になれたら祝福とともにおまえを愛してあげる

上白糖一キログラムざんざ降る庭におまえを隠しておこう

わたくしの胸の地獄の蓋があきまっすぐ足をさしいれてゆく

王国を破壊せしめよ自らの神としてのみ生きると叫べ

わたくしはあなたの剣です果物をむいて差し出すこともできます

暗い暗い淵なら世界のどこにでもあるからいつでも迎えにゆくよ

王国で凍ったあなたのために泣くわたしの声が届きますよう

木々の群れ空から撫でた神様がそうだここに国を作ろう

寒ければそれでよかった王国に帰りたいのに流されてゆく

くるみ割り人形はただ泥濘を漂流しつつ女王を呼んだ

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