外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅱ(就寝時間) ウィスプ

ほころびた庭にひたひた寄せる海だあれもいないはないちもんめ

いつか死ぬために生きてる僕たちのさいごの呪いの言葉をきいて

絶望を知らぬ子供にころされるみにくいけものにひかりがさした

こうやって、わたしは、わたしを、くみたてる、よかったね、もう、しなないんだよ

人間のちからが作ったウイルスが嘆きの粒をざらりと撒いた

わたしはこんとんわたしはみんなわたしはひとり とてもさみしい

新しいプログラムを呼べ輝きに満ちて世界のワクチンとなれ

終わったらも一度灯してかがり火を次から次へ渡していって

ほんとうの子供ではない。それでも戦いを生き延びなくてはならないんだよ。

俺じゃない誰かになりたくて深夜、おまえを許さないってこと決めた

かがり火をめざしておいで生き延びるための食事が用意してある

何もない闇を愛することはなくそれでもウィル・オー・ウィスプは僕だ

お願いは叶えられたから逃げられない、僕の名前は、なくなりました

ウィルスに侵されてどんどん傷がひろがってゆくこんとんのやみ

偽物の子供は早くほんとうの世界を見つけなさい 海を見ろ

海を見ちゃだめだよあなたのなかにさえヘヴンズドアの軋みがあるよ

データ受信しましたか? それではall delete 実行キイを押します

からっぽだ それでも世界が求めてる救いをざんざと与えなくては

ゆめのなかできみにあうとき海辺でもくるしいほどにあたたかな腕

浴槽でいだきあったらさよならで あなた、おかしい、死んでしまうわ

関係がないでしょう? 別個の戦争を同じ海から見ているだけよ

目を閉じろ 砂漠にいるのはおまえではないってことだけ信じ続けろ

だってもう無垢だった日に帰れないんだから俺は世界を救う

こわいです。二段ベッドの下の段ぼくのしらないひとが死んでる。

僕たちはあなたの虚像になりましてそうしてあなたは帰ってこない

狂ってた他人の日々のなかで呼びたかったのはただあなたの名前

はやくきて僕を食べてよそうじゃなきゃ僕はどんどん食べてしまうよ

ピーターパンなら死んだから卓袱台の向こうに座るあんたを待つわ

ワクチンを僕に与えて僕だって、ただ、生きていたい、だけだったんだ

旅に出るたびにおまえの闇に手を沈めていつしかおまえは俺で

千年分の呪いと同じだけ祈りを詰めたからだがあるよ

なくなったはずの記憶をつめこんだ黒い卵をそうっと撫でた

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