外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

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2022年

アイス半分

喫茶室どこも閉まって行き着いた席にあなたを招いてる夜
空からは何にも降らない午後七時机の上に水の輪を見る
パフェに差すスプーンの先少しだけ割れててこれじゃ殺せないよね
花束を足したり引いたりしてくれた店員さんに一輪捧ぐ
しょうもない人生だよと言い聞かせながら氷の角をつついた
今日あったことを順繰り思い出しながら揺れる冷房風を見ている
サンドイッチ品切れとなる時ばかりサンドイッチの欲が募った
斜めにはならないように半月をそっと浮かべるクリームソーダ
星屑を集めたような点灯を順番に見てただ待っている
マヨネーズ味のコーンを食べながらなんだかすごくお腹が空いた

今日は友達のリクエストで喫茶店の短歌を作ったのですが、最近ちゃんとした喫茶店(ちゃんとした喫茶店というのは、コメダ以外のことです)に行っていないので、これは本当に喫茶店だろうか。ファミレスかもしれない。ファミレスには多いとき週2で行くので……。

子供ではない

口よりも大きな匙をしっかりと握った子供を膝から下ろす
正夢にならないように願ってるお兄ちゃんだけ行ったんだって
笑顔には意味がまだない幼児の写真を貼った壁を見つけた
どこまでも深い地下室風船に詰まった空気のようなかそけさ
煙吐くあなたの声をしんみりとここに子供がいなくてよかった
子供なら調べてみたかもしれないねうつろに響く探求精神
罪を抱くために生まれたわけでなく鎖いっぽんブランコ揺れた
水に氷たくさん注いで飲めていた記憶に繋ぎ止められていて
もう子供ではないから拾う手帳には今日の日付にバツがついてる
行くよ今世界が変わるトリガーがどこかにあるかもしれないのなら

世界が変わるトリガーが引けているといいですね。

色々ストレスだったらしく、朝イチで下痢嘔吐に見舞われて寝込んでいたのですが、なにしろ今日は選挙なので、どうにか出かけていき、帰る元気もなくファミレスに寄り、古本屋に寄り、ハンバーガーショップに寄り、本屋に寄り、ドラッグストアに寄ってふらふらと冷房から冷房にさまよい歩き、結果としていつもより活動的な一日でした。胃の具合はまだちょっと微妙です。

ファミレスで子供が口よりでかいスプーンを振り回しているのを見ました。

マルバツゲーム

暁暗に口を開いてぱくぱくと月を食べてる夜から出よう
とろみとかぬるみの多い生活をタオル一枚使って拭う
取り返しのつかない嘘をいつまでも大事に抱えて歩いていくか
玄関の前に座って向き合って静かなマルバツゲームをしてる
有難いお話を聞く夢の中急にあなたが全部を食べた
スコーンをふたつに割って塗るときに思い出したこと何だっけ
ぬるい風纏って歩くどこまでも夏から逃れられないでいる
水打ちの壁を歩いていくときに立ち上るのは夢の味わい
分厚くて柔らかい丸抱えたらこれだけ持ってひとりで行くよ
バツのない世界に辿り着いたなら特別切手で連絡するね

ついに紙の手帳で全てのTODOを管理する限界が来たのでオンライン管理と併用にしました。

TODOリストをオンライン管理するとゲームみたいで楽しいのですが、ゲームみたいで楽しすぎてあらゆるTODOを書き出すと100個とかになり、ちょっとげんなりする。Jootoを使っています。実は7年くらい前にも使ってたみたいで当時のTODOが残っていてほのぼのとした気持ちになりました。

かいだん

餃子屋のなかで笑っていればもうこれからずっと永遠が来る
夜について話しておいた方がいいっぽいのでこれから行こう
アルコールちょっと入れたら体温がゆっくり上がって今がその時
すべり台てっぺんまでは気づかないままでいられる高音の風
くちづけのあとにゆっくり嗅いでおくちょっと湿ったミントの匂い
今ここで目の前にいるわたしから目を逸らさないままでいられる?
公園の中央に来る渦巻に覆われてゆく街が遠くへ
知っている方に来たから何というつもりでもなく元気でいてね
ゆっくりと降りる階段思ったより飲みすぎてたかもしれない穴
ワンピース涼しくていい夏の日に風が下から上がってきても

餃子屋でレモンサワーを飲みました。ちょっと甘かったが、良い一日だった。

妖精の国

目覚めたら二度と帰れぬ妖精の国であなたを探しています
穴の中に声をかけつつ行く道で誰かの返事がなくてよかった
明日から十年あとの人生が始まるらしいとしたらどうする?
殺された時にわかった真実を伝えるすべがもうなくなって
胎内でひろがる嘘を話さないことが愛だとまだ思ってる
真ん中の裂け目を越えてここに来てもう離れないと約束をして
くちづけの先がわかった時に抱く肩の薄さにためらっている
タイタニア連れてってくれ罪のない遠い草地にのびる雲まで
それ以上理解を拒む指先が塞いだ口の向こうの湿気
行こうもうこの先どこにも属さない空で女王が手を振っている

昨日の夜眠れなくて、急に「なんか去年くらいにローションガーゼのBL小説書いたよな……」と思って探して読んだらまあ実際ローションガーゼのシーンはあったんですけど、全体的には妖精の国の話というかティターニアが出てきて子供を攫う話で、組み合わせるな! ティターニアとローションガーゼを!! と思いました。結腸も責めてた。組み合わせるな!

見知らぬ朝

ミチミチに疲れ果ててる脳内でゆっくり山羊があくびをしてる
これ以上手には持てないトランプの一枚を出す 地面に落ちる
やばい嘘ついてもついても終わらずに地蔵菩薩が来るのを待った
神様をあるだけぜんぶ信じると定めたときの心みつける
過去遠く生きていたと聞く人類は笑ったりしていたのだろうか
目覚めればいつも見知らぬ朝であるみんないつでも不安なままで
親切な大人になったことからは別に得られるものはなかった
ただ行くよ 選んだことのない道がいつも進めと待っているから
酒だけは強くていつまで続くかもわからぬ缶をまた積み上げる
背に硬いアスファルトもうこの熱い夏から逃れないのだろうな

小説を書きました。→「金星は女である

辺里はTRPGのシナリオに出てくるNPCで、PCとして使ってもいるのですが、いろいろ細かい設定があり、上記の小説はその一部です。でもこの小説はTRPGとは特に関係ないです。

辺里は12歳の時に塾講師といろいろあり、すっかり大人の男が嫌いになったのですが、大人を嫌いであっても人間は生きていればいずれ大人になるのであった。そのあたりのことは話が暗くなるので省いたのですが、またそのうち書こうかな~と思います。

正夢

空腹を感じなくなるまで食べることで意識の漂白をする
窓の外はゆっくり日暮れ一日は今日も喪うばかりであった
時間とは紫陽花に似てバラバラであるのにひとつのように感じる
きれいだね並べた付箋に書き込んだ今日の予定を全部燃やして
ウィルスに満ちた都会でオムライスひとつ食べてる今夜の予定
タイル地のトイレでハンカチ広げてはこんな刺繍があっただろうか
よく遊びよく食べよく眠る人になればだいたい満ち足りている
具合はもう良いかベッドに横たわるほどに人間嫌いでいても
さっきまで雨に振られていたらしい道の湿気を避けられないで
イヤフォンをさして歩いて行く道のいずれかで待つ正夢がある

自宅勤務なのでかなりすごくずっと家にいるのですが、本当は人間は家にずっといてはいけない(正確には、全然運動をしない状態が悪い)ので、せめて散歩くらいしないといけないわけです。短歌を毎日詠んでいると、せめて視界を切り替えるか……と思うため、出歩きがちになりました。めでたし。

毎日短歌を詠んでいても、その日読んだ本のこととか、考えていることとか、いろいろあるので、別に詠むことがなくなるとかはないのですが、一定の傾向に傾きがちではあるので、刺激を求めたほうがいい。というか、短歌を毎日詠まなくても刺激はある程度求めた方がいい。そして「刺激を受けたなあ」という自覚を持ちつつ刺激を受けた方がいい。そういう意味では毎日短歌を詠んでよかったと思います。

毎日短歌を詠み始めた最初は、いろいろあってクサクサしてたからせめてクサクサをきれいに整えておくか……と思って始めたのですが、個人的な依頼を頂いたり、毎日創作物を上げている人であるという実績になったり、前述の通り刺激になったりしているので、まあしばらく続けようかな……。ブログも短歌なかったら続かなかった気がするし……。

ブログと思うと毎日は書かないが、短歌のオマケと思うと意外と書いている。

ドーナツホール

縁のある人から繋いだ糸であるから何だって話なんです
傷まみれの指先にはクリームを心だったら何を塗ろうか
欠如からしかわからない心音を聴いてふたりの実在の部屋
紙切れに書き留めた嘘拾われて壁に止まったちょうちょになった
繋げたい他人と他人の相性を無視して一個の塊にして
割る果実半分ずつを手に持ってじゃあねそのうちまた会いましょう
一緒にはいられないけどドーナツの穴を分けたら半分の月
穴からは抜け出せるから空いていてよかった欠けた心としても
空白にペンを置く時静寂が身を包んではほどかれていく
ありえないことを共有できること ドーナツホールを食べた思い出

今日は「バトルもくり」という……競技……? をやり、8時間で17000字のシナリオを完成させて優勝しました。8時間のあいだ(というか、休憩含めて10時間のあいだ)ひとつのことを考えていられることはなかなかないので楽しかったです。嘘の話を書きました。

作業は詰まっているので明日から頑張ります。

ミュートボタン

いつの日かたどり着きたい坂道をまだ登ってる夕暮れが来る
ミッションをクリアできたら貰いたいスタンプひとつ楽しみにする
正解と思っていたら急に来る落下速度が冷たく痛い
姉さんがそれでいいならもう二度と会わないことで復讐とする
一段を飛ばして歩く階段を見られたらもう死ぬしかないな
素麺のつゆであっさり死んでゆく小蝿のように終わりたい気も
集中が必要である夜が来て先生を早く殺さなくては
飛び降りる時は一番欲しかった靴を靴屋で買おうと思う
耳尻尾毛皮をつけて欲しいって頼まれたならやってみますか?
雑音がぷつりと終わり人生にミュートボタンはないはずなのに

朝から仕事をし……5000字のTRPGシナリオを書き……書き終わり……夜からシナリオを書き始め……書き終わらず……そして一日が終わり、わたしは短歌を詠んでいないことに気づいたのであった。というわけで今です。

教訓:一日にふたつシナリオを書こうとしないほうがよい。

一秒後

遊園地どこにもいない春風に急に吹かれて流されていく
やまいだれ上手に書けて一番に助かるはずの船がもうすぐ
眠りはもう浅く乏しくどこまでも広がっていく斑紋である
いい気分だけど極めて上質な布を食べてるだけかもしれない
雨が降る中で踊っているという映画の中で読んだ果実酒
君のこと覚えていないらしいよと教えてあげる親切なので
宇宙から来たって言った石ころが続けた言葉を信じてあげる
猫たちが一斉に鳴く時を待つといいことあるって聞いた
毎秒間ほんとは違って見える場所に立ったままで手を繋いでる
特別な人とは思わないけれど今日はビールを一杯奢る

暑いのでどんどんカフェオレを飲んでしまうのですが、牛乳を一日で一本飲みきってしまうことがあり、さすがに……どう……と思い、牛乳を週に二本までしか買わないことで対処できないかと思っていますが、牛乳がないからといってコーヒーを飲まずにやっていられるわけではなく……。

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