外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場
ひよりと胡蝶
- 1 耳を買う話
- 胡蝶さんはお祝いの日、耳の標本ばかり売る骨董屋できみにも苦手なことがあるのに安心してしまった話をしてください。 祖母は美しいものを集めるのが好きだった。例えばピンどめした蝶、例えば昭和のガラス細工、例えば宝石がはまって彫 […](更新日:2025月3月28日)
- 2 坑道の話
- ひよりさんは頭が煮えるほどあつい火曜日、深く暗い坑道の奥で眠ってしまったきみのタオルケットをはいだときの話をしてください。 胡蝶は覚えていないようだったが、ひよりが胡蝶について知っていることがいくらかある。ひよりが「夢子 […](更新日:2025月3月29日)
- 3 髪を伸ばす話
- 胡蝶さんは低気圧が接近している水曜日、図書館の貸し出しカウンターの前で指の腹で触れたものについての話をしてください。 もちろん、この世は、美しいものばかりで構成されているわけではない。 胡蝶は、相月ひよりという女性を連れ […](更新日:2025月3月30日)
- 4 階段を登る話
- ひよりさんは古傷の痛む日、眼科のあるビルで微かな頭痛がぬぐえない話をしてください。 「まだ耳?」 「耳は嫌いですか?」 「耳がどうとかじゃないんだよ。ルールがあると思ってたからさあ」 「ルール」 胡蝶はひよりの言葉を軽や […](更新日:2025月4月1日)
- 5 辻褄が合う話
- 胡蝶さんは問題が一つ解決した夜、がたつく椅子に座ったままできみの使い込まれた赤本についてした話をしてください。 胡蝶の理想の「耳の標本」入手のための一日は、あまりうまく運ばなかった。駅前にはビジネスホテルが一軒しかなく、 […](更新日:2025月4月3日)
- 6 夢を見ている話
- ひよりさんは足元の影が細く長く伸びる夕方、くらげがいるという波打ち際でアイスクリームをうっかり溶かしてしまった話をしてください。 「夢子さん」 ひよりは夕暮れの海を歩いている。裸足の足の下で、少しずつ砂が崩れていく感覚が […](更新日:2025月4月3日)
- 7 絶望の話
- 胡蝶さんはかすかにパンのかおりがする朝、フローリングの部屋で考えていたことが結局実現しなかった話をしてください。 窓を押し開けると、パンの香りがした。モーニングをやるようなホテルではないから、近くにパン屋があるのだろうと […](更新日:2025月4月4日)
- 8 朝ご飯の話
- ひよりさんは自覚をした日に、チューブ状の交通機関で流星群を見に行く計画を立てたことの話をしてください。 なんだかたくさんの人と話をしたような気がするのだが、あんまり覚えていない。半分寝ていたような気がするし、もう半分は酔 […](更新日:2025月4月5日)
- 9 遺産の話
- 胡蝶さんはなんでもない日に、がらんとした部屋で剥いてしまったアボカドが固かったことに気づく話をしてください。 胡蝶は自室にいる。二十歳の誕生日に何が欲しいかと聞かれて、一人暮らしをしたいと言ったら与えられた部屋に住んでい […](更新日:2025月4月6日)
- 10 普通の話
- ひよりさんはバレンタインデーの翌日の夜、無憂という名の喫茶店で役に立たないものを見つけた話をしてください。 「耳の標本」を累胡蝶が探していた夏、ひよりは三十一歳だった。もうひとつ歳を取って冬が来ていたが、月収は振り込まれ […](更新日:2025月4月8日)
- 11 感情の話
- 胡蝶さんはうす曇りの5月のある日、アンティークのパイプを扱う店で微かな頭痛がぬぐえない話をしてください。 「人とだって話せるようになったじゃないか。知らない人と買い付けにだって行けた。簡単だろう?」 薄曇りの五月のような […](更新日:2025月4月8日)
- 12 花屋の話
- ひよりさんは手向けの花束を用意した日、川がすこしだけ見えるアパートで見つけた鳥のようなものの話をしてください。 しばらくは事務作業があり、次にふたりが会ったのは、三月も終わりつつある頃だった。 「どうして花を?」 「新居 […](更新日:2025月4月9日)
- 13 ロックスターの話
- 胡蝶さんは小さな羽虫が電灯のそばを飛んでいた夜、魚などつれやしない釣堀でロックスターの一生についての話をしてください。 ジジジ、ジジ、切れかけた街灯が揺れている。すっかり夜になってしまった部屋から、ようやく脱出できた。三 […](更新日:2025月4月11日)
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