外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅳ(百万年) ドアに鍵

神様になれと言われた。なりました。よるでもしらじらひかるまちです。

迷子にもなってみたいな待合の真白い壁に凭れかかれば

迷子にはなれぬ真白い顔の子が廃墟の俺を睨みすえたり

まなざしに幼い顔が覗く時いつでも真白い恋をしている

永遠に愛され続ける罰を得ておまえは俺を兄さんと呼ぶ

捨て子にだけ見えている服 黄金がしっかり抱きしめているような服

毒槍をつきつけられてまた恋に落ちておまえが憎くてならぬ

決然と壊されてゆく俺たちのここまであわされなかった指が

傷のないふりをしている金の薔薇ばらばら砕ける時をこらえて

ほんとうの俺を見つけてその愛を夏のおわりにくれてやってよ

あなたさえ薔薇を薔薇だと言うならば醜い俺はどこにもいない

ぴかぴかに磨いた彼の黄金のひとつを奪えばあなたのものだ

ぬるまった指で触れると傷痕が破れてしまう やめてくれ

はじめから喪われていた両腕をおまえのなかに探した不覚

墓場には俺の愛した子ではなく俺の亡骸だけが埋もれて

ドアの鍵は閉めたか? 兄さんはおまえを守ってやれはしないよ

兄さんと呼ばれる資格だけ持って前人未到の星へ旅立つ

ぼくのぶんぜんぶあげるね いいからね あしたもぜんぶもっていってね

虐殺の朝だ望みは叶えられおまえはひとりで目覚めるだろう

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