外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

架空 Ⅲ(ふたりきり楽園に) 八月

八月の嘘だよあなただけ残し世界が終ってしまったなんて

八月にあの街を爆破するために地図をおぼえた兵隊の春

爆弾は街のうえから落とされてそのままずっとそこにあります

溶け方を知らなかったのいつまでも知らないままでいられたはずで

おかあさん、おかあさん、おかあさん、僕自転車で三日探し続けた

花束を配り続ける少女たちそのひとときに動きを止める

黙祷 黙りかた知っているひとはみんな加害をくわえられます

ばくだんがこわいひこうきがこわい吸いかけたままたばこが、ぼう、と、

またあした、そう言って別れてからずっとわたしの明日が見つかりません

子供たち殺したのはわたしです! お水をあげてはいけなかったの!

迷う必要はないもう八月を誰も忘れはしないのだから

祈りならいまこの街にただ溢れどこにもゆかずに燃え尽きてゆく

こわせこわせ皆燃え尽きてなくされる前に本当の話をしよう

戦争はいつのことなの 石畳に焼きついたおかあさんの影

永遠に生きよと告げた神様が消えてしまって帰ってこない

戦争を知っている人よせたげない白い人だけゲームをしてる

八月が終らないのでわたしたち罪の形を磨き続ける

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