外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

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「あ」は「悪」の「あ」
テーブルの上に、ことん、とキーホルダーが置かれて、そしてそのキーホルダーを、誰かが持ち上げた。おれはキーホルダーを見て、そしてその手の持ち主を見た。なんだかおかしくて、というのは、おれの後ろ方向、これまでにあったことの全 […](更新日:2024月7月8日)
荒野
どうやら死後の世界にいるらしい。死後の世界は一面の荒野で、見渡す限り誰もいない。おれと兄ちゃんのほかは。 何も分からずに歩いている。ただ、水がどこかにあるのではないかとだけ思って、足を交互に前に出している。 隣には兄ちゃ […](更新日:2024月7月8日)
記憶の重さ
弟が結婚すると聞いた。弟本人から聞いたわけではない。そうらしいと人づてに聞いただけだ。あいつはおれのことをもう覚えていなくて他人なので、そして思い出すことはおそらくないので、目の前に顔を出すのは嫌だった。 ずっと探してい […](更新日:2024月7月9日)
竜を殺す方法
オッドタクシー/大門兄弟/自殺の話   小説を書いている。語彙力がないのでうまく書けないけど楽しい。幽霊の話だ。正確には、生き霊の話。 舞台は異世界ファンタジーで、頭がよくてしっかり者の男の後ろに、生き霊になっ […](更新日:2024月7月9日)
うしなう
オッドタクシー/大門兄弟(兄×弟)/兄が偽装結婚する話   あのねえ堅志朗さん、わたしは同性愛者なんです。だからお付き合いはできないんですよ。すみません。 「お付き合いはどうでもいいんだよ。結婚はどう」 目を細 […](更新日:2024月7月9日)
祈らないでここで
兄ちゃんが宇宙船に攫われて一年が過ぎた。人間はどんどん菌になってしまい、かろうじて生き残ったニュースによるとそれは、宇宙人と同一化してしまったということらしいのだった。空間に、黄色い気配だけを残して、ざあっと消え失せてし […](更新日:2024月7月10日)
ポイント・オブ・ノー・リターン
オッドタクシー/大門兄弟/作中時間軸   宇宙にいるらしい。 ぺらっと敷かれたブルーシートのように、宇宙に屋上が浮かんでいる。おれは詰め襟を着た十四歳の姿をしている。だからここは中学校の屋上なのだろう。 遠くに […](更新日:2024月7月10日)
こころざしたかく生きよ
オッドタクシー/大門兄弟/最終回後   面会に来なかったのは、弟の行動としては正しすぎた、というか、保身らしすぎたので、おそらく、本人の判断ではなかった。でもそれでよかったと、おれは思っている。 ただ毎月、二万 […](更新日:2024月7月10日)
ボリューム
ボリュームを絞る。 もう少し小さく。もう少し大きく。もう少しだけ大きく。そう指示すると、弟はその通りに声を上げて、持ち上げた本を朗々と、でも大きすぎない声で、読んだ。弟は、言われた通りにするのが得意だ。 学校をサボって、 […](更新日:2024月7月10日)
コントロール
親が死んだ子供には、頭を下げなくてはならない大人が多数存在する。そのおじいさんは「親の恩人」で、おれたちは「世話になっていた」。何由来で世話になっていたのかは、よく覚えていない、というか、あの頃も知らなかったと思う。 修 […](更新日:2024月7月11日)
領域
ずくずくと痛むこの感情が、恋であるなら、なかったほうがよかった。キスをして嬉しいのが事実なら、全てが嘘のほうがマシだった。全てを皆が見ているのに。 森の中、花が咲くところが境界で、そこから内側に、人が棲んでいる。ここに皆 […](更新日:2024月7月11日)
英雄譚
あの終焉には、鉛の弾丸が効くらしい。 鉛さえ手に入れば弾丸を作るのは難しくないと学者は言った。しかし鉛はここにはなく、外に出られる目処も見つからない。 おれは一握りの生き残りと一緒に、研究施設に立てこもっている。施設の人 […](更新日:2024月7月11日)
犬に噛まれた話
交番で預かった犬に手を噛まれた。病院には行ったのだが、それはそうとそれから、宇宙船の夢を見る。犬を迎えに来たのが誰だったのかよく思い出せず、考えていると、次第に彼らは宇宙人だったような気がする。 そもそも犬ですらなかった […](更新日:2024月7月11日)
おまえバカなんだから
昼下がりのファミリーレストランにいる。おれと「それ」と店員以外は誰もいない。おれはおばあちゃんの財布から抜いた一万円札を持っているので何でも注文できる。抜いたっていうか、おばあちゃんは死んでしまったので、全部おれたちの金 […](更新日:2024月7月12日)
十二月のラーメン
弟の死を覆さなくてはならない。 おれがすっかり根無し草になってぷらぷらしているあいだに、弟は警官の仕事を続け、風当たりが強い中でもそれなりの敬意を集めたり、バカにされながらもそれなりに良い仕事をしたり、したらしい。でもな […](更新日:2024月7月17日)
虎の見えない目
その中学の同級生というのが実際存在したのかどうかも、今となってはよくわからない。 東京から始まって家々を訪ね歩き、神社仏閣に足を踏み入れ、怪しげな組織に潜入し、必死で探し歩いていたものが、なんだったのかも、今となってはど […](更新日:2024月7月17日)
転がる岩
逃げている。何も考えられない。 おれは転がる岩に追われている。岩、のような塊、の中から、頭がいつも見える。化け物に追われている。 考えた方が良いことがあるのに、うまく考えられないまま、おれは必死で走っている。 人生が、全 […](更新日:2024月8月3日)
夜の薄い光
オッドタクシー/大門兄弟/原作時間軸(ネタバレあり)   時々甘美な夢を見る。 おれは犯罪の片棒をかついでいるのだが、べつにたいしたことはやっていない。警察組織に所属する人間として百%まずいことをやっているのは […](更新日:2024月8月3日)
手紙を書くよ
手紙を書くよ。 でも送らないでおく。面会には応じてもらえないし、おれのことはもう、いらないのかもしれないから。おれはずっと兄ちゃんのモノだったので、隣にいられないなら、持っていられないなら、意味ないのかも、とも思ってる。 […](更新日:2024月8月3日)
正しい人生
シャンプーとシャンプーじゃないやつを見分けられるようにならなかった。 頭にしるしがついてるらしいのだが、おれにはしるしがついてるほうがシャンプーなのか、ついてないほうがシャンプーなのか、よくわからないのだ。しかも、ボトル […](更新日:2024月8月3日)
よくきくくすり
オッドタクシー/大門兄弟/本編中軽いネタバレあり   ずいぶん長く、眠れずにいる。たぶん、嘘をついているからだろう。 いろんな薬を試している。合法的なものから非合法なものまで。手に入れようと思えば手に入って、も […](更新日:2024月8月5日)
パーソナル
どうして弟がそんなに有頂天になったのか、うまく理解ができない。 その本は子供の頃の工作の時間に弟が作ったもので、転々と落ち着かないおれたちの人生の間、弟がずっとそれを持っていた理由もよく知らない。中を開いて読んだこともな […](更新日:2024月8月5日)
からあげ
オッドタクシー/大門兄弟/グロ注意   弟の腹に穴が開いていて、おとうさんは「晩飯はからあげだぞ」と言う。 言いながら、弟の腹からキッチンばさみで切り取った肉を取り出しては、ビニール袋に詰め込んでいる。袋の中に […](更新日:2024月8月5日)
夏のぬるい海
おれたちは十八歳で、夏休みをふたりで過ごすために、ベランダの一角を使って植物を育てていた。種を飲ませれば死んだ人が生き返るのだと聞かされて、おれが買ってきた苗だった。兄ちゃんはその買い物に対してバカ、と言ったし、当時のお […](更新日:2024月8月5日)
杏のケーキ
杏のケーキを食べた。 おれは長い間、兄ちゃんとそれ以外、しかない世界に生きていたのだけれど、ちかごろはずいぶん簡単に友達を作るようになった。気になるときはばんばん話しかけて、面白いことがあったら笑ったりする。始めてみれば […](更新日:2024月8月5日)
1ページTRPG「インスマス再脱出」
1ページTRPG「インスマス再脱出」 GM不要、PL1人、6面ダイス1つ(1D6)必要。 サポート的にGMを用意してもOK。   H・P・ラヴクラフト原作『インスマスを覆う影』の二次創作TRPGです。 アメリカ […](更新日:2024月11月2日)
しゃぶしゃぶの話
佐藤さんは絹糸のような雨が降っていた午後、精肉店で書ききることができなかったことについての話をしてください。 「え? ちょっと待ってください、もう一回、え? ちょっ……」 軒のすぐ先には細かい雨が降っているし、電話の向こ […](更新日:2025月2月17日)
仏像の話
田中さんは季節風がはじめてふいた日、山の古寺で本当なら弱音をはいてもよかった話をしてください。 何でも良かったしどこでもよかった。仕事で扱った本の中に美術品に関係するものがあって、山奥の寺にあるという仏像が載っていて、そ […](更新日:2025月2月18日)
スーツの話
佐藤さんは日が落ちるのがずいぶん早くなったころ、大理石の床のロビーで結局くたびれもうけだった話をしてください。 「わざわざ来てもらってごめん」 「別に……いい飯が食えたし」 謝ってなお肩を落としていたら、田中は普通の感じ […](更新日:2025月2月19日)
煙草の話
田中さんは渇水の夏に、アンティークのパイプを扱う店であのときテレビの音が背景になったことの話をしてください。 喉が渇いて、全部の音が遠くなった。 佐藤は俺を好きなのだと思った。 壁に掛かったアンティークはどれも売り物であ […](更新日:2025月2月20日)
夏休みの話
佐藤さんは夏休みの最後から二番目の日、非常ドアの前で忘れてしまった夢についての話をしてください。 学生が終わる、高校三年生の夏休み、とくになにもせずにふらふらしていた。完全に現実逃避として、ソシャゲを五種類やって、レアカ […](更新日:2025月2月21日)
ガムの話
南下するし、週末は晴れてるから、と田中が言った。「カノープスが見えるかも」 「って何?」 「星。東京だとぎりぎり見えるっちゃ見えるはずなんだけど、地上スレスレだし、そもそも東京が明るすぎて、よく見えない」 「星好きだっけ […](更新日:2025月2月22日)
犬の話
ワインを取って戻ってきたら、佐藤がラウンジの片隅で、扉のむこうを覗き込んでいた。ホテル上階の展望ラウンジにいる。宿泊券が当たって(佐藤が引き寄せて)ふたりまでだからと誘われて、夕暮れに待ち合わせて泊まりに来た。ウェルカム […](更新日:2025月2月23日)
宗教法人の話
田中さんは蒸し暑い日、頭上にいろとりどりの洗濯物が干されていた路地で銀の匙をくわえて生まれてきたきみについての話をしてください。 まあでも僕ってこうなんだよ、と、当たり前のことのように佐藤は言った。そこは南国の路地で、洗 […](更新日:2025月2月24日)
プレゼンの話
田中さんは屋根を雨が叩く昼過ぎ、エレベーターホールで口先だけで信じるとうそをついた話をしてください。 雨の日は頭痛がする。子供の頃からそうだったが最近とみにひどくなった。佐藤が言うには俺は自分の苦痛に対して鈍感だというこ […](更新日:2025月2月26日)
耳の話
佐藤さんは蝋梅の咲いた朝、耳の標本ばかり売る骨董屋で夕方になるにつれて頭が痛くなる話をしてください。 僕は人生の一時期、田中を連れて街を歩いてばかりいたことがあった。田中の精神状態が乱れていて、しかも家から出ないものだか […](更新日:2025月2月26日)
サティの話
佐藤さんは昨日の雨がちいさな水たまりになって残っていた朝、きれいな水の流れる古い町で遠くから聞こえてきたピアノの曲についての話をしてください。 ずいぶん川の多い町だ。駅からパン屋までの間に三つ、橋を渡った。スマホの画面を […](更新日:2025月2月27日)
王様の話
田中さんは地球の自転が止まった日、池のそばに立つ東屋でブルーブラッドという語の意味についての話をしてください。 「田中のことが好きだと思う」 こういうとき、全てが止まる、というのは、本当だったのだと思った。 会社に、穏や […](更新日:2025月3月1日)
ペーパーフラワーの話
田中さんは冷たい風の吹くころ、造花で飾られた部屋で足りないものをごまかした話をしてください。 いちめんに咲いている――ということになっている――花は紙でできた、めくってふわふわにつくる、ありがちなやつで、折り紙を切って作 […](更新日:2025月3月1日)
台風の話
田中さんは雨が十日続いた翌日の朝、青銅の雨どいのそばで結局見つけられなかったものの話をしてください。 長すぎる台風が日本をゆっくり北上していた。俺の会社はこういうとき、在宅勤務を推奨するタイプで、まあ、いい会社だと思う。 […](更新日:2025月3月2日)
泡風呂の話
田中さんは夜通しDVDを見た翌日の朝、綿菓子の香りがする泡で満ちたバスタブで不注意でガラスを割ったことについての話をしてください。 「眠かった?」 「眠かったわけではない……」 「ぼんやりしてたけど。疲れてた?」 「疲れ […](更新日:2025月3月3日)
小銭の話
佐藤さんはけだるい五月の昼前、まばらに人がいるファミリーレストランで足りないものをごまかした話をしてください。 だめだこれ、きれいに割れない、細かいのがないから、と言って、田中は机の上に、百円玉をひとつ、置いた。午前十一 […](更新日:2025月3月4日)
運動場の話
田中さんは胸がしくしく痛むほど寒い月曜日、まだ少し湿ってる運動場でわけもなく感じた辛さについての話をしてください。 子供の頃、これを忘れないようにしよう、と思ったのを覚えている。なんてことのない風景だ。体育の時間で、俺は […](更新日:2025月3月5日)
世界の終わりの話 第1話
佐藤さんは街から子供がいなくなった日、草がぼうぼう生えた三メートル角の空き地で無いはずのものをなくしたような気がした話をしてください。 東京に異変が起こる。 いくらかのニュースが報道されて、普通の失踪事件だと思われていた […](更新日:2025月3月6日)
世界の終わりの話 第2話
田中さんはどうしようもなく憂鬱な気分になった夕方、避暑のための家で切れて治らない唇の傷の話をしてください。 東京に異変が起こる。 東京から人間が消え失せていく。まず子供が消え、ついで、子供ではなかったはずの人間が子供にな […](更新日:2025月3月7日)
世界の終わりの話 第3話
佐藤さんは酷暑に、やどり木の下でオルゴールにつけられたバレリーナの人形の話をしてください。 東京に異変が起こる。 僕たちは子供の姿に変わっていって、どんどん退行していって、いずれ消え失せてしまうらしい。もともと子供だった […](更新日:2025月3月7日)
世界の終わりの話 第4話
田中さんはまつげが震えるほど寒い夕方、初めて行った喫茶店で嫌だったけれど承諾させられたことについての話をしてください。 東京に異変が起こる。 冗談のつもりだった。俺の家の近くに、存在しない神社があって、存在しないので神が […](更新日:2025月3月8日)
世界の終わりの話 第5話
佐藤さんは長いおわかれのあった日、コーヒーの匂いのする部屋で食べたことのないものの話をしてください。 東京に異変が起こる。 その結果、僕たちは――田中と僕は、小学三年生の姿をしていて、喫茶店に、向かい合って腰掛けている。 […](更新日:2025月3月8日)
世界の終わりの話 第6話
田中さんはお祭りのあった日、白く清潔なラボで貰ったチョコレートが好みの味じゃないという話をしてください。 東京に異変が起こる。 はっと目を覚ます。白い天井が俺を出迎える。建物の中はざわついていた。俺は大人の姿に戻っていて […](更新日:2025月3月9日)
世界の終わりの話 第7話
佐藤さんは木枯らしの吹く日、暗い淵を覗き込んでちびた鉛筆が一本転がっていった話をしてください。 東京に異変が起こる。 僕は空の上を吹いている。風になったんだ、と僕は思う。僕って子供の頃から体が重い方で、どんくさかったので […](更新日:2025月3月9日)
世界の終わりの話 第8話
田中さんは寝苦しい夜に、端々に雑草の生える広大な駐車場でお焼香の作法がわからなかった話をしてください。 東京に異変が起こる。 空間に真っ直ぐ、裂け目がある。 真っ暗な裂け目が空間を通って空を通って地面を通って、ぐるりと発 […](更新日:2025月3月10日)
世界の終わりの話 第9話
佐藤さんは昨日の続きの今日、引っ越しをしてきたばかりの部屋できみのハンカチを借りつづけている話をしてください。 東京に異変が起こったことがある。でももう、ずいぶん前の話だ。 俺たちは引っ越してきて、元通りの東京にいる。東 […](更新日:2025月3月11日)
世界の終わりの話 第10話
田中さんは旅立ちに適した日、月のうらの砂漠で風で飛ばされていったものについての話をしてください。 東京の異変のおわり、そこには佐藤がいた。 「迷ってたんだ」と、俺の前に立って、佐藤は言った。 「何を?」 俺はあらゆる感情 […](更新日:2025月3月12日)
世界の終わりの話 エピローグ
佐藤さんは枯葉が巻き上げられて踊る夕べ、放流するダムの見える山の中腹でわたしにだけ付いてこなくなった月の話をしてください。 今でも時々、風になったときの夢を見る。僕は一度神になって、それから風になったことがある。風になっ […](更新日:2025月3月13日)
1 耳を買う話
胡蝶さんはお祝いの日、耳の標本ばかり売る骨董屋できみにも苦手なことがあるのに安心してしまった話をしてください。 祖母は美しいものを集めるのが好きだった。例えばピンどめした蝶、例えば昭和のガラス細工、例えば宝石がはまって彫 […](更新日:2025月3月28日)
2 坑道の話
ひよりさんは頭が煮えるほどあつい火曜日、深く暗い坑道の奥で眠ってしまったきみのタオルケットをはいだときの話をしてください。 胡蝶は覚えていないようだったが、ひよりが胡蝶について知っていることがいくらかある。ひよりが「夢子 […](更新日:2025月3月29日)
3 髪を伸ばす話
胡蝶さんは低気圧が接近している水曜日、図書館の貸し出しカウンターの前で指の腹で触れたものについての話をしてください。 もちろん、この世は、美しいものばかりで構成されているわけではない。 胡蝶は、相月ひよりという女性を連れ […](更新日:2025月3月30日)
4 階段を登る話
ひよりさんは古傷の痛む日、眼科のあるビルで微かな頭痛がぬぐえない話をしてください。 「まだ耳?」 「耳は嫌いですか?」 「耳がどうとかじゃないんだよ。ルールがあると思ってたからさあ」 「ルール」 胡蝶はひよりの言葉を軽や […](更新日:2025月4月1日)
5 辻褄が合う話
胡蝶さんは問題が一つ解決した夜、がたつく椅子に座ったままできみの使い込まれた赤本についてした話をしてください。 胡蝶の理想の「耳の標本」入手のための一日は、あまりうまく運ばなかった。駅前にはビジネスホテルが一軒しかなく、 […](更新日:2025月4月3日)
6 夢を見ている話
ひよりさんは足元の影が細く長く伸びる夕方、くらげがいるという波打ち際でアイスクリームをうっかり溶かしてしまった話をしてください。 「夢子さん」 ひよりは夕暮れの海を歩いている。裸足の足の下で、少しずつ砂が崩れていく感覚が […](更新日:2025月4月3日)
7 絶望の話
胡蝶さんはかすかにパンのかおりがする朝、フローリングの部屋で考えていたことが結局実現しなかった話をしてください。 窓を押し開けると、パンの香りがした。モーニングをやるようなホテルではないから、近くにパン屋があるのだろうと […](更新日:2025月4月4日)
8 朝ご飯の話
ひよりさんは自覚をした日に、チューブ状の交通機関で流星群を見に行く計画を立てたことの話をしてください。 なんだかたくさんの人と話をしたような気がするのだが、あんまり覚えていない。半分寝ていたような気がするし、もう半分は酔 […](更新日:2025月4月5日)
9 遺産の話
胡蝶さんはなんでもない日に、がらんとした部屋で剥いてしまったアボカドが固かったことに気づく話をしてください。 胡蝶は自室にいる。二十歳の誕生日に何が欲しいかと聞かれて、一人暮らしをしたいと言ったら与えられた部屋に住んでい […](更新日:2025月4月6日)
10 普通の話
ひよりさんはバレンタインデーの翌日の夜、無憂という名の喫茶店で役に立たないものを見つけた話をしてください。 「耳の標本」を累胡蝶が探していた夏、ひよりは三十一歳だった。もうひとつ歳を取って冬が来ていたが、月収は振り込まれ […](更新日:2025月4月8日)
11 感情の話
胡蝶さんはうす曇りの5月のある日、アンティークのパイプを扱う店で微かな頭痛がぬぐえない話をしてください。 「人とだって話せるようになったじゃないか。知らない人と買い付けにだって行けた。簡単だろう?」 薄曇りの五月のような […](更新日:2025月4月8日)
12 花屋の話
ひよりさんは手向けの花束を用意した日、川がすこしだけ見えるアパートで見つけた鳥のようなものの話をしてください。 しばらくは事務作業があり、次にふたりが会ったのは、三月も終わりつつある頃だった。 「どうして花を?」 「新居 […](更新日:2025月4月9日)
13 ロックスターの話
胡蝶さんは小さな羽虫が電灯のそばを飛んでいた夜、魚などつれやしない釣堀でロックスターの一生についての話をしてください。 ジジジ、ジジ、切れかけた街灯が揺れている。すっかり夜になってしまった部屋から、ようやく脱出できた。三 […](更新日:2025月4月11日)

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