あの終焉には、鉛の弾丸が効くらしい。
鉛さえ手に入れば弾丸を作るのは難しくないと学者は言った。しかし鉛はここにはなく、外に出られる目処も見つからない。
おれは一握りの生き残りと一緒に、研究施設に立てこもっている。施設の人間や、一般市民と一緒に、ここからできることが何かないかと必死で頭をひねっている。
家族を見失ったままひとりでここに来た者は多く、おれも例外ではなかった。
幸いなことに発電装置が生きていて、おれは兄ちゃんに一日一回、位置情報のついたメッセージを送った。返信はこなかった。
ある日町の中心に、巨大なぬいぐるみが現れて、それから、町の人々は玩具に変貌していった。足の中身が綿になっていることもあれば、脳が消滅してしまうこともあった。町はパニックに陥り、逃げ惑う内、研究施設におれたちは集まった。
ここには十人とすこし、老若男女がいて、それぞれに意見交換をしている。皆怯えているが、幸いなことに表面的には穏やかに暮らしている。おれが警察官で、おれたちには市民を守る使命があるので安心してほしいと話したことが、役に立ってるといいんだけど。
おれはいつも、研究所の受付前に腰をおろして、外の様子をうかがっている。外には玩具が転がっているばかりで静かだった。しかしおれはその日、待っていた。胸を高鳴らせながら。皆助かるかもしれないと、まだ誰にも話していなかったけれど、その可能性が十分にあった。おれは、待っていた。
「兄ちゃん!」
手をぶんぶんと振って、おれは、ゆっくりと近づいてくる相手が、おれによく似ていることに心底安堵して――そうして。
おれの兄ちゃんは、おれによく似た双子の兄は、扉を開いて出迎えたおれの手のひらのなかで、小さな人形に変わった。
鉛の兵隊だった。おれは鉛ってなんのことだかわかんなかったけど、これが鉛だということはすぐにわかった。なぜなら兄ちゃんが、メッセージをくれたからだった。
おれの兄ちゃんは、鉛の兵隊の姿になって、小さな玩具になって、おれのてのひらのうえに横たわっていた。おれはうずくまって、震える手を握りしめた。心臓がばくばくと鳴る。おれは生きているので心臓がうるさく鳴る。支給された拳銃を持っている。鉛の弾丸ができたら、おれが撃ちに行くと言っていた。おれは射撃が得意な方なので、間違いなくみんなを助けられると、鉛さえ手に入れば終焉を止められてみんな助かると、ずっと、そう言っていた。
黙っていた。それがおれの罪。滅びを待った。罪を抱いたまま。
――GPSを拾った。そちらに行く。必要なものはあるか。可能なら調達する。鉛? そうか。それなら、大丈夫だ。待ってろ。
――おまえにならできる。