外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

Ⅳ 神様に生まれた罪『剃刀の夜』

まず眠り。そうして始まる毒薬についての短い話をしよう

青空はどこにもないか智恵子よ我々のさざれてなくなる眠りのなかに

迷い家にたどりついたら花たちのにおいをたよりに歩き続けよ

鏡なき国の破片をとらえればあなたはわたしの顔をしている

うたかたとゆめがしんじつかもしれず 波間にて揺れ さきがなくても

水際はおどろくべきなできごとに混ざって曖昧 わたしとあなた

寄る生きる寿ぐための電灯の夜のよるべのないまさかさま

夕涼を保存して夜さびしさにかまけて青い扉を開く

「照らされているみたいだね」「何を?」闇には始まる境界がない

どこかにはあったようだねひろびろと全てを忘れていられる世界

臓物をさらけだしたらこんじきのざくろを浴びた剃刀の夜

ものすごいまちがいのほうが恐らくは正解に近い旅をしている

生きていたことを寿ぐ よるべなきぼくらの生を現実とする

国に住むことを忘れた夜だった短い落下が終わる瞬間

「つきがきれい」意味を喪失するまでにひとりもふたりもみんなもおなじ

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