外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

Ⅳ 神様に生まれた罪『月と狼』

ほんものがわたしの先にあるというナイフを掲げる 何も見えない

舌先にざらつき とうとう鉄分が脳まで回ったようでうれしい

明日きみがわたしを気遣う中空を予め撃つコンマ数秒

神様になれると思った? どうやって? わたしをぱくぱく食べちゃうことで?

「ずるいよ」瞼の青い溝。「僕はこんなに」欲望は汚辱。

パーティーで一番モテる青年の輝きの無辜無意味不条理

よこたわるわたしの体が指先まで発光している あなたにとっては

わたしあなたを選ぶはずがないってこと知ってるはずで爪が汚い

土喰とおわった霧と満月がすべて醜い今月今夜

銃創があなたの額に ええ そうね 撃たなかったのは不手際でした

ハイヒール片足ごとに海にゆくさよならさよなら宇宙塵、苔

野の花の増して険しい手づからに陳腐を摘んだくだらぬ男

満月を呼び戻してよわたくしが落ちたるそれに溺れるまえに

おうごんになれないわたくしひとりきりシフォンの沈むくらげの自殺

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