外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

Ⅲ 皆方探偵事務所異聞『粗熱』

塗りつぶすように悪夢は紫の頭痛によく似た重い停滞

なにもないわけでもなくてただひとつ気がかりなのはわからないこと

「あなたには富がある」とそう、告げた時わたしはいったいわかっていたのか

分配を憎め。あるいは悲しめ。せめて富の価値をあなたは。あなたは。あなたは。

ニセモノの星が見られる空洞に詰まったあなたの長いため息

「おれは嫌ではありません、傷つくの、ただ、あなたの心が見たい」

湖は潮の気配が肩越しに染み入ってゆく泣いていますか

柚子味の熱いボトルの粗熱を奪ったあとで差し出している

傷ついたあなたの声が追いやって終わる紫色の侵食

明日あさおきたら終わっていたとして失われないはないちもんめ

新しい記事
古い記事

return to page top