外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

生まれなおしの部屋

「きもちわるい」「きれい」あいだのどこかしらあなたのあなたのあなたのいない

夏が来る前に消えゆく計算で秤を買った 十円だった

寒天のただなかにいる君のいる部屋を見ている まだ帰れない

サツガイの夜に精液二回分なににつけても陳腐となった

「おれはもう二度とおまえをゆるさないけれどおまえに関係ないよ、それは」

分割をされた名残を抜くためのシャンプーコンディショナー六日分

七日目に君が気づいた「死んでいく途中で悪いが印鑑をくれ」

憎悪という極めて陳腐な物質をどうしたものか 花でいいかな

アルトだけ足りない混声合唱の練習時間を間違えていた

じぐざぐに縫い合わせてる膝がある 明日起きる は 辞書にないです

ねむらないためにあわせるくちびるの図鑑に載った点滴の跡

「このけがは治らないんだ」謝って済むことではない「たすけてよ」

「みんな」なら赤信号で笑いながら君を見ていた 「みんな」なら

週末に動いていないまなざしを覆って夜を続けましょうか

ある日君が、空手の指を差し出して、「これは何?」と言った階段

ある日君が、黒いスーツの肩越しに、「あれは何?」と言った太陽

ある日君のいない部屋から漂ったこれから燃える油のにおい

罪人は誰だったのかわからない ねえ 明日どうする?

「水族館行ったことない」三歳の子供のように君に告げる日

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