花が咲くことについての千文字を書いてそのまま空に散らした
愛について語る言葉の総体の無力についての徒歩三十分
植物の名前を持って生まれた魂が誰かを見てる それだけのこと
ねえいつかわたしがここにいることに誰かが気づいてしまうのかしら
俺の名は雪原にある植物の名だと告げると笑った女
先駆植物のヒロイズムゆえに閉ざされた未来を歌おうか
「もう死ぬよ。ねえなんで泣くの。十分だよ。全部もらった。十分でしょう」
近い未来、彼の作った日陰から、違う樹木が彼をつらぬく
どこまでも広がってゆけ雪原で純度の高い愛だけ交わし
鳴る鐘の音を聞くとき思い出すあらゆる全てを与えた悪夢
平凡な男と女がコンビニですれ違えない寒い冬の夜
ありがとう愛されるために生まれて生き延びて泣いて喚いて名前を呼んで
「ねえあんたに世界の全部をあげるわね、目を開いてよ、わたしを呼んで」
いずれかの架空の女のどれかより架空であったぬるいまどろみ
君のため生まれて生きて蓄えたあらゆる全てだ 一緒に死のう
コンビニですれ違っている誰かには与えられない酒瓶ひとつ
男たちの途方もないほど長い夜の今日が最初の午前零時
真実の愛の定義をまた明日歌うためただ朝日を待った