外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

Hush a Bye Baby

さあおいでいい子だ おまえを踏みつける特別な足がここにあるだろ?

目に見えぬ弟ひとり飼っている 目に見えないので安全でいい

裏返って腹を見せろよ 野蛮人おまえはひとのこころがないね

大丈夫、怖くないだろ、最初から、おまえが最初に殴ったはずだ

痛いのはあたりまえだよ生まれつきおまえひとりが鋼鉄製だ

痛々しい俺の弟を眺めてる 死ねばいいよね 本当だよね

「舞台にはあいつひとりが立っていて殺されるのは俺ではないよ」

なあ兄さん、何千回と唱えても俺の名前がわからなくなる

ただひとつ俺がおまえでないという証明書だけ見つからないの

水辺にはあらゆる夢の女たちそして唐突な「早く死ね」

痛いという俺の兄を見つめて笑ってる それならよかった ひとりで死ぬよ

魚たち俺の手紙を食べないの? どうして? 毒は混ざってないよ

「ねえ兄さん、魚は誤解をしてるんだ」「ずっと愚かなままでいなさい」

煮詰まった鍋から救い上げる蜜 気が遠くなる 「なるほど毒だ」

裏返って腹を見せろよ卑怯者 おまえはひとのこころがないな

さあこれが俺の愛だよ純粋に氷点下から取り出してきた

とある雪の朝に立ち去る富豪から剥がれ落ちてゆく金の粒

王様が去ってゆく街神の死はずいぶんあとまで響く予想図

ゆきゆきてだたひたすらの雪原の彼が手にするドライフラワー

雪道に残るかたちを見おろして「俺がいなけりゃ凹まなかった」

さあおいで兄さん これはあんたを踏むための足

ショウをはじめようか空色は常に俺ひとりだけを肯定している

新しい記事
古い記事

return to page top