外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

実在 Ⅱ 自殺者一名 『日給二千円(交通費込)』

一時間五百円の計算のケーキで購われたわたくし

重要なパーツをなくしたような朝コーヒー味の砂糖を飲んだ

神様に生まれついたら忘却の権利を買うため生涯あるく

父親になるためにつけられている細長い嘘が映る鏡

父親はあんなかたちをしていると見下ろした足跡の巨大よ

間違った場所でとにかくこれからはケーキを毎日焼きますからね

なにもかもスタンドプレイで行っているような街神様不在

あたたかいシリアルキラーの指先を暖め続ける迷路がぼとり

神様。わたしはあなたにどのようなたのみもしませんからそこにいて

さびしいよさびしいよ海 友達をのみこんだまま僕を食べない

おんなのこになりたくてうぶ毛剃りがんばっている夜風が凍みる

それならばどうしてあなたは神様のふりをしたまま戦ってるの?

神様のいない宇宙で生きていくけわしいハイヒールを買いました

あたたかな雪の牢屋の最奥で花芽をふかぶかと摘む

プーさんがハニーハントをしたあとに入るお風呂の泡の臭いだ

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