外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

実在 Ⅴ 実在 『海辺のふたり』

憎んでるわけでもなくて海辺には影が長々死の床につく

沿線を最後までゆく終着に執着駅と吐き捨てて夏

問いかけを投げれば海があるからと答える水着 愛ではなくて

ひからびたやもりを庭に埋めている背中に投げる膨大な嘘

「戦争が終わった後の長い夏」「終わらせたなんて誰の台詞だ?」

狐火を追って波間を分け入れば狐ではなく俺だと言った

水面に浮かべた瓶を流さずに毎日拾いあつめて帰る

泡のよう 飲み終わらない薬には一日三回服用とある

右利きの男の右手にゆびさきを絡めて歩いて罪から罰へ

幽霊を食べすぎている八月の夜にやさしくひとごろし、と、

新しい記事
古い記事

return to page top