外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

実在 Ⅲ BADEND 『狙撃手』

うつくしい夕日があれば我々は個人が個人であるままに撃て

勇敢な戦士となって味噌汁を煮る力を朝、装填すること

性行為じみた相互の戦歴を数値化される淫靡の教室

好きなもの嫌いなものを選り分けた筆頭に立つ崇高を蹴る

黄泉からはデッドエンドでただ君を装填している七月七日

別人を生きていければトリガーは手のひらよりも奥にあること

ミント味タブレット噛み感覚を麻痺させないため煙草を捨てた

溶けかけた一片だけを欲しがって薄荷糖只悪意なき無為

ドリームはアフタヌーンするパレードであなたを殺さなくてはならぬ

ぬるぬるに埋もれて電車を見送ってお帰りなさいここが現実

海辺にはだあれもいない砂粒のひとつひとつが眺めてるだけ

ゆめのあとゆめだったことゆめみてたたましい半分ちぎってくれた

ばらばらにこわれたときだけ哄笑をとりもどせるから早く消えろよ

死に方も知らないままでへらへらと飛んでは落ちるうすばかげろう

夏茄子の味噌汁よ立て引き際を知らぬ勇士の絶望を見よ

自業自得だろうよおまえの一途には遍在できるしたたかがある

火星から戻る一瞬くちづけを経てもう一度離陸している

寂しくない 解けない謎に囲まれてヘラヘラ笑って死ねるものなら

これはペンですか? いいえ温かい井戸のほとりであなたを待つの

かみさまにおねがいしたのはぜんぶうそ 一等賞はあげられません

吹き飛ばす される 頭の良い子供だったってことは忘れないまま

雷音はけだものの名だあなたさえ居ない世界は息ができない

逆立ちをするくらいならサーカスと呼んでもらえる? そんな感じだ

闇の夜にそぼふるようにわたくしがあなたを装填して生きている

明晰な真紅の円を指差して撃ち殺されよとあなたは言った

他人には家がなくなり我々はばらばら死体の幻視を踏んだ

ふるさとと呼びたくはない君の身を抱いてさようならが言えない

バッドエンドたとえば朝の猫二匹ぬるい会話にオチがなかった

てのひらの温みが消え失せる夜冷えなんだ起きてたのかよ

寒天の中の果物として生涯を終えるしあわせを知らぬひと

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