外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

実在 Ⅱ 自殺者一名 『二度とひとつのものになれない』

音のないあなたのなかで生まれたの なんにもないのほんとうの意味

べつべつの人間になる扉には鍵がかかって喉のおくです

ほむらには観覧車で見た不確定事項を投げてふたりはひとり

笑いながら「あなたの家を焼く」という黒猫を見た 腰骨に見た

机には直径五ミリの穴があきあなただけしか仲間がいない

この箱は完全だから壊そうねって約束だった暑い日だった

わからない?ぼくら組成が違うから蝶々さえもばらばらになる

わすれてよわたしが教えたきりん座の星で起こったすべてのことを

かわいそうな子供が泣いているのだと乳房に触れた男の無慈悲

肉体の悪夢をつかみ乳房からあふれてこぼれてあなたを食べる

間違った生命ですねカールした髪の優しいかそけささえも

月である。兎も鹿も蛇どもも二度とひとつのものになれない。

いとしいと思ったことは一度とてないという嘘だけを信じた

視野狭窄上手に起こし学校で習わなかったバリアを張った

病んでゆく布団カバーにがんばって、がんばってって言い聞かせてる

閃光はおとうさんおとうさんおとうさん帰ってきたのって雷鳴

美しい神様からのかがやきに祈り以外のともしびがない

破壊してこなごなになった心音がまたひびいてる白皙の朝

ビターチョコだけの世界があればいい 俺はそこにはゆかないけれど

ほんとうの街に住みます天井に神様がいる青い部屋です

これからは連翹ばかり描いてるさむいさむいふゆがもうじき

ふうんってじゃあまたねって言っている二度と会うことのない動物

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