外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

Ⅳ 神様に生まれた罪『神様に生まれた罪』

世界には始まりがあり始まりは何も知らない白痴の闇夜

ゆううつな夕に見ましたつま先の爪のましろの船を見ました

陽炎よ足りない嘘をもう一度そうもう一度浴びせかけてよ

ほんとうはぜんぶをなくした王国に行けたら泣いてもいいんですよね?

丸まった自分を埋めた公園のジャングルジムの上で踊る

どうなってもいいよ懐中時計にまみれた朝にひとりぼっちで

大丈夫だって言ってよ咳込んだ迷子の夜は終わるんでしょう

落日を待つことはできないようでありがとうを言う 聞こえずに言う

天蓋にたどり着けない雛だった頃のわたしの歪な祈り

憂鬱を忘れてきたの苦しみも誰かの嘆きも忘れてきたの

蜜としていきるくるしみ 食べ終わるあなたの喉はもう忘れたな

わたしはもう帰れぬ森の水底にわたしを置いてまいりましたの

問い詰める前だったよね押入れのきみのぬかるみみたいな息は

ここにはもう残っていない中指の爪のかたちをした沈丁花

神様もみんなもおなじ 生まれてきたそれ自体が罪だったんだ

さあこれで最後だ おれは出せるだけおまえのための魚をやった

どうも船のように見えるおれの手を取ることがない葬儀が終わる

月面を離陸するときのぞきこむ月がきれいだ 揺れる花束

死体から二度と帰らぬはじまりの密室殺人わたしのおわり

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