外マドレーヌ─哉村哉子いろいろ置き場

実在 Ⅲ BADEND 『たすけてよ』

しゅうちゃんのこと好きよって言っている呪いが解けていない街角

たすけてよ たすけてよ ねえ あのときは選んでもらえなかった僕を

他人には縋らないこと雨の日は残った湿度が消えてゆくこと

どこからも救いのこない廃墟にてわかりきってる答えを言った

迷わずにひとごろしになる。確実にアイデンティティを組み上げるんだ。

ただ単に女の子であり友達とシーソーゲームをした日もあった

ゆめをみたままでおまえを抱いていて世界の全てが遠くてならぬ

愛だけが世界を壊すフレーズとわかっているのに楽園にいる

そいつはさきっと楽しいことだよね? そうならいいな ぜんぶがいいな

美しい庭にぼくらはたどり着きそこから先に抜けねばならぬ

君泳ぐいずみになったあかつきに冷たい水を許しておくれ

だれひとり救えないってわかってる最終電車を遠く見ている

迷子にはならないでね。お姉ちゃんの手を離さないで。楽園にいて。

セックスより隠微な指が靴紐を買ってあげるのおねえちゃんだから

間違っているね子供の残響を壊してやれない俺の一途は

永遠をアタッチメントしてみせるおまえひとりが俺を殺せる

ゆうやみにあなたの指がぬかるんで熱くて熱くてひどく死にたい

満ち足りて満ち足りてゆく落下傘どこまでどこまでどこまで底は

ラブラブは劇薬ですよ処方箋通りに飲んで生き延びましょう

狂人を見つめて息をつくひとのやさしいやさしいはないちもんめ

闇夜にはあなたの影が見えるからしっかり目を凝らしてほらはやく

さようなら、さようならあの日笑ってた石ころみたいにばかげてた俺

おたがいでなければならないということはないのだ常におわりなき虹

雨の音以外の音が聞きたくて深夜おまえの寝息を聞いた

百度目の問答いつもおなじこと「だってそいつは楽しいからさ」

コントローラブルな悪夢を生きていることのどこに問題がある?

ぬるぬると絡み合ってる蛇がいる 未来という字の真似をしている

俺たちは永遠に生きるんだ。人間はかたちなきものを信じる。

手助けはいらないおまえはそこにいる俺のとなりにいないときでも

突き刺したたましいひとつ転がして「これはわたしの心臓である」

無限には得られないもの指先でそっと剥がして添付している

欲しいのは理解ではなくまなざしで二つの星が手をつなぐ夜

生存を完遂してよ僕なしの世界があなたにあったとしても

今ひとり生きてゆくこと右手には殺人衝動ただ一揃え

タナトスは俺の名前じゃないという子供のまなこに蛇の彩

みずうみにうつるあなたの影をみてわたしがいるとわたしは言った

やみよには温かい沼 手のひらに おまえのいつも少し笑う目

食べ物、と呼ばれてはい、と答えてる利害の一致が素晴らしかった

もっともっとおまえを装填しつづけて生きるってことは続くってこと

夜に笛聞いたら二度と戻れない最終電車にみんなで乗った

俺たちに明日はないって物語あしたがきたってずっと続けて

しゅうちゃんのおねえちゃんのお名前をまだ街角は忘れていない

日蝕が始まる前に覚えてて きみを愛するために生まれた

「うつくしい庭もかがやく石塊もここにはなくてずいぶん遠い」

「ひかりだけ見つめていれば俺たちはきっとひとつのものでいられる」

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