何もない世界をつくるだけになる神様みたいな熱病だった 急にいま速く速くと騒ぐ虫たちが心中にいて光となった 夢見ているだけのようだが雪原はもろくつめたく痛みを発す あと少し食べれば終わる夕食を思い至って端から捨てる 成長をしているんだねパキパキと割れる音すら立てる孤独に 親をいずれ殺して幼年期が終わるどうせこんどは始まりが来る ぬるい海あなたとわたしが如何様に他人であるかもうわからない 主旋律やがてこなごな 物質はなべてそうして在るのですから うつくしくおなじかたちであれという制服を着る呪いであった うつくしくもないのが自由 そこからは自分の足で走るんですよ
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市川春子『宝石の国』を11巻まで読んだので今日の短歌はそれです。子供時代がようやく終わって青年期にさしかかったところという感じなのでこのまま中年まではやってほしいと思うのだが(いまわたしが中年だから……)ストーリーテリングの都合上老境までもしやったら老境すごくきれいにまとまりそうで、別に老境に至ったからきれいにまとまるのが人生じゃないだろみたいな気もするので、精神年齢の話というより解脱の話になるのかな……。
ずっと何も得られなくて愚かであっても『喪失』の権利は誰にでもあるというのはわりと希望、という気もしました。まあでもどっかで反転して「喪失を伴わない純粋な獲得だったけどそれはそれで満たされない」という展開にもなってほしい気がするが、なにしろここまでで11巻なので、50巻くらい続けないと人生の話にはならんだろと思ったのだが、どこまで続くんだろう。