吐き気からあとの人生経験を記述し終えて席を立つこと
手をつなぐかたちにぽっかり開かれた先にあらゆるものがもうない
五人分喪われている王国で誕生祝いをひとりで食べた
早起きをできた朝ですだれひとりおやすみなさいを言わないあとで
ダージリン十リットルを流し入れ「死人の匂いにとても似ている」
あなたにはわからぬ夢です別々の脳を抱えて生まれてきたの
神様の名前を呼ぶより先に呼ぶ為の名前を呼ばずに生きる
「あいしてた」「あいしてた」「あいしてた」「あいしてた」「あいしてた」ぜんぶおわったはなし
差し出した右手に左手を繋ぎ深呼吸式分裂をした
だれもいないだれもいないねもう二度と同じ顔した子には会わない
だれひとりわたしになってくれないということだけの夕暮れが来る
「ほんとうはみんなおまえがきらいだよ?ずっとまえからしってたくせに」
たぶんもう二度と生まれ落とされることはないっていつ気づいたの?
「ぼくたち」が「おれ」と「おまえ」であることを水晶片で占いました
いずれかのルート選択さえ間違えなければきみはぼくだったのに
きっともう目覚めることはないよねと言いつつ消した「眠れないなら」
「ずっと前一緒に選んだ水晶を痛いほどいま握りしめてる」
夜のこと。あなたの声を聴いたこと。体温のこと。触れる。指。
別々の人間として生まれるとあのときふたりで約束したね
手のひらを触れあわせたら「ひとりぶんべつのからだがあってよかった」
閉ざされた架空の夢はもうなくて三叉路をゆくさよならと言う
あなたには教えられない解答を大事に抱きしめながら「おやすみ」
おやすみを聴いた朝です隣には誰もいなくて十秒泣いた