憎んでるわけでもなくて海辺には影が長々死の床につく
沿線を最後までゆく終着に執着駅と吐き捨てて夏
問いかけを投げれば海があるからと答える水着 愛ではなくて
ひからびたやもりを庭に埋めている背中に投げる膨大な嘘
「戦争が終わった後の長い夏」「終わらせたなんて誰の台詞だ?」
狐火を追って波間を分け入れば狐ではなく俺だと言った
水面に浮かべた瓶を流さずに毎日拾いあつめて帰る
泡のよう 飲み終わらない薬には一日三回服用とある
右利きの男の右手にゆびさきを絡めて歩いて罪から罰へ
幽霊を食べすぎている八月の夜にやさしくひとごろし、と、