その店には入り口が三つあり、それぞれの入り口が、ひとつだけの座席に繋がっている。赤い扉、青い扉、黄色い扉を抜けると、赤い部屋、青い部屋、黄色い部屋に出る。私は黄色い部屋が好きだ。黄色いと言っても、黄色いクッションがひとつと、デスクランプのシェードも同じ黄色であるというだけで、他は深い茶色の木目に沈んでいる。クッションに体をもたせかけると、コーヒーが出てくる。
この店で飲めるのは本日のコーヒーだけ。焼き菓子がひとつついてくる。ラズベリーのマカロンと、似たような香りのコーヒーが口にできた。何時間でもいていい。その席を手に入れるための値段は安くはないけれど、私はこの店が気に入っている。
日々に疲れた時、この店でぼんやりしている。仕事帰りの遅い時間にやってきても、店はいつも通りの顔で待っている。音楽はひとつも鳴っていない。心の内側がその静寂に慣れるまで、私はここに座っている。
ここで本を読んだり仕事をしたりする人もいるのかもしれない。私は心の内側を無音にするために来ている。黄色いクッションを抱えて、その黄色だけが、自分の人生を導いてくれると信じながら、私は今日も、黄色い部屋に来ている。

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