上手ではない指先のゆくさきに咲いてる花の手伝いをした こぼされた赤いしたたり満足にひらいたようで微笑んでいる 蝉たちがずいぶんうるさい校庭を横切ってゆく誰もいないね もう秋が来るからひとけのない街をサボっていこう電車に乗って 河童には河童の法があるという赤錆びている鎖を抱え 手を繋ぐように叩いたスマートフォンまた明日まで熱を抱いた 海鳥が鳴く岸辺なら思い出になるのだろうと瞬いている 落ち葉からそろそろ黄色くなるという宣言を聞く夏が終わるね ねえもっと先に行こうよ明日にはたぶん終わっている夏だから しゃぼん玉大きく一個飛ばしたらあとはうつぶせに目を閉じる
◇
夏が終わるなあ……。夏、ちゃんと終わるんだなあ……。