はじめに
広島県の、「まあ県庁から徒歩圏内と言ってもいい」くらいの場所に住んでいる。「徒歩圏内」の感覚はひとによるだろうが、この表現によって「ならあのへんか……」の特定を防いでおく。わたしはけっこう歩く方だ。
実家も広島だが、もっとずっと山の奥にある。2015年9月に実家を出て、一人暮らしを始めた。だから、10年の歳月が経ったことになる。
この日記では生活の話をたくさんしているので、一人暮らしと家について書いておこうかと思う。登場人物だから。
家を出るまで
色々あって就職をしなかった。更に色々あって、メンタルを壊した。という経緯で、家を出そびれたまま、仕事を転々としつつ小説を書いてダラダラ8年くらい経過していたが、家は相当居づらくなっており、家を出る直前の年はろくに家に帰らずファミレスとネカフェを転々としたりしていた。
ネカフェを転々とするくらいなら引っ越すか……と思った。
最初の家
最初の家に引っ越した時はとても嬉しかった。わたしはこの家に異常な愛着を寄せていて、9年も住んだ。四畳半+2畳のキッチンしかない、すごく狭い部屋で、9年も住むような空間では絶対になかったのだが。ロフトベッドとデスクと冷蔵庫と洗濯機を置いたらもうぎりぎりだった。
最初は「外で働いて外で原稿やるんだから、家なんて寝るだけだから」と思っていた。なにしろ直前までネカフェで暮らしていたので、十分だろうと思った。
しかしわたしは何故かこのあと在宅ワーカーになり、次いでTRPGプレイヤーになった。この四畳半が衣食住遊働のすべてになってしまった。こんな空間で衣食住遊働のすべてをやるというのは、ほとんどかたつむりと一緒である。体を家の形に添わせながら、肌のすぐ先に家の壁があるような状態で生きていた。
四畳半は自分の皮膚であり身体であり殻だった。
愛していたが、愛だけではどうしようもないものもあり、引っ越した。
今の家
四畳半を愛しすぎているので誰に何を言われても引っ越す気がなかったのだが、とにかく本当に散らかっていて、というか許容量を超えていた。いつも掃除をしていた。1年間くらい毎日掃除をし続けても端から端から散らかるので、無理だなと思って、引っ越すことにした。
四畳半を愛していたため、「でも四畳半が良かったな」とは絶対に思わない物件を探し出さなくてはならなかった。というわけで、とにかく広い物件に移ることにしようと決意を固め、不動産屋に行った。「3部屋くらいあると嬉しいんですが」と伝え、そのまま内見に行き、1軒目が気に入って、その日のうちに決まった。不動産屋にしては珍しく、無駄口がなく仕事の早い人だった。
という経緯で3DKにひとりで住んでいる。
まあ、オーバースペックではあるのだが、家で働いているんだからストレスなく過ごせた方がいいに決まっている。仕事部屋と寝室が完全に分かれていて快適。あと1室は「読書室」で、本棚と手芸の道具が置かれている。映画を観ながら編み物をしたりする。
読書室のおかげで、家にゆとりがある。正確には、ゆとりの享受が義務化されている。全然入らないのもよくないから……みたいな理由で読書室に入って休憩をとるので。
最初の家に住んでいたときは、デスクに監禁されていて、逃げる場所はベッドの上しかなかった。読書室の存在は、自分の人生に必要な余剰であるなと思う。
幸せに暮らしている
この家に何年住むかはよく分からないが、四畳半と違って「ここから動きたくない」わけではなく「何の不満もなくて動く必要が全然ない」ので、何らかのトラブルに見舞われるまでは住みたい。県外に出る選択肢がないわけではないが、しかしこの暮らしは快適だしな、と思う。
光の美しい家で幸せに暮らしている。ずっとここにいられるならそれが一番良い。


※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます